Colloquium

NO.242
Weekend Mathematicsコロキウム室/NO.242

NO.1784   電磁気学Minimum-5(磁気現象)     2009.4.24.  DDT

以下、 ベクトル解析Minimum-1234 の式は、無条件に使います。
 電磁気学Minimum-4では、 Ampareの法則とFaradayの法則を整理した結果、 真空中の電磁場の支配方程式、

    (a)

    (b)

を得たので、これをMaxwellの方程式と呼びました。 ベクトルポテンシャルA,スカラーポテンシャルφと、電場E,磁束密度B(磁場H)との関係は、

    (c)

    (d)

です。観測にかけられる物理量は、BとEなので、これらが最終目標となります。 しかし論理的には、(a)からAを求めれば、(b)からφが決まり、 それらから(c),(d)でBもEも計算できるので、まず(a)を解きます。

1.波動方程式を解く

    (1)

は波動方程式と言われ、偏微分方程式の中でも形式解が見つかる数少ない例です。 数少ない例なので、(1)を満たす形式解を導きます。まず、

    (2)

とします。これによって(1)は、

    (3)

になります。
 これから行う計算は長いです。 しかし、一回でも完全にやると納得できるものなので、やる事にしました。 しかしいきなり(x,y,z,t) の4変数では厳しいので、とりあえず(x,t) で考えます。 このとき(3)の微分作用素の部分だけ取り出すと、

 

と手軽に分解できます。次のアイデアは、気づいた者勝ちです。
 (x,t)→(p,s) と変数変換して、

    (4)

    (5)

とできないか?、というのがそのアイデアです。
 もしこれが可能なら、

 

になるので、

 

の解は、すぐみつかります。何故なら、

    (6)

と形式解は簡単にわかるからです。ここでdf1/dp は(f1 は)、 sに対する積分定数でpの任意の関数です。f2 はpに対する積分定数で、 やはりsの任意の関数と出来ます。 (4),(5)を満たすような(p,s)=(p(x,t),s(x,t)) を求めるために、 A=A(t(p,s),x(p,s)) と考えて、(4)を考慮しつつ∂A/∂p を計算すれば、

 

となり、中辺と最右辺の係数を比べる事により、

 

が得られます。同様に、∂A/∂s と(5)からは、

 

となります。まとめると(以下は、1階の完全微分を解いたのと同じです)、

 

です。これらをp,sについて解けば、

 

が得られます。よって(6)のf1(p),f2(s) は、

 

と書けますが、1/2cは定数であり、f1とf2 は任意なので、 1/2cはf1,f2 の一部とみなす事ができます。よって(6)より、

    (7)

が、

    (8)

の形式解で、しかも一般解です。f1(x−ct) を波動方程式(8)の前進波, f2(x+ct) を後退波というのは、ご存知と思います。 よって(8)は、ある波を与えます。任意関数f1,f2 の具体的な関数形は、境界条件によって決まります。 しかし(7)が(8)の一般解であると、どうしてわかるのでしょう?。
 次の条件を使っています。

  2階の偏微分方程式の一般解とは、その方程式を満たし、かつxとtの関数2個分の不定性を持つもの.(9)

という条件です。(9)は、2階の常微分方程式の一般解が、

  その方程式を満たし、かつ任意定数2個分の不定性を持つもの.

という条件と同じだと時々言われますが(論理的にはそうかもしれませんが)、 具体的なイメージは全く別物です。だいたい(7)は、(9)の言質をそのまま満たしているわけでもないのです。
 (7)が仮に、A'=f1(x)+f2(t) だったとします。 このA'は、一見「xとtの関数2個分の不定性を持つ」ように見えますが、 A'の xとt に関する偏微分をとってみると、

 

となり、それぞれの偏微分はxだけ、tだけで決まる事がわかります。 A'が本当に(x,t) の関数に関する不定性を持つなら、∂A'/∂x も∂A'/∂t も(x,t) の関数であり、 しかも任意でなければならないはずです。従って(7)は(9) の言質をそのまま満たすものではなく、 (9)はかなり曖昧な言い方である事もわかります。 (7)が(8)の一般解であるのは、以下のような具体的理由に基づきます。
 任意関数f1,f2 の具体的な関数形は境界条件によって決まりますが、 1次元の波動方程式(8)の場合、それは普通、

  t=0 において、A=g(x).
  x=0 において、A=h(t).

という境界条件になります。ここでxとtの1変数関数であるg(x)とh(t) は任意です。
 f1(x−ct) でξ=x−ct とした場合、ξの値を一個決めれば、f1 の値も一つに決まり、 ξ=一定のライン上では、f1の値も一定です。 すなわち、(x,t)平面上にf1のグラフを描けば、x−ct=ξという直線は、 (x,t)の2変数関数であるf1 の等高線になっています。
 上記を(x,t)平面上の時刻t のラインで考えてみると、x≧ct では、t=0 における波形g(x) が、 (x,0)から(ct,t) だけ平行移動するのがわかります。これは、t=0 における波形g(x) が、 速度cでx方向に伝播すると読めます。
 時刻tラインの0≦x<ct の領域では、x=0におけるf1の値h(t−x/c)が、 (0,t−x/c) から(x,x/c) だけ平行移動するのがわかります。 これは、x=0 における波源h(t−x/c) の値が、速度cでx方向に伝播すると読めます。特に、

  t=0 において、A=0.

とすれば、時刻tラインのx≧ct では、常にf1(x,t)=0であり、 波動が存在するのは0≦x<ct の領域で、しかもその値は、 位置xでAの値はx/c秒前の波源の値と同じなので、f1(x−ct) とはまさに、x=0における波源h(t)が起こす、 x方向に前進するhの値の伝播を表わしています。
 よって1次元の波動方程式(8)の解は、t=0 における全空間の波形g(x) と、 x=0 における全時間に対する波源の振る舞いh(t) で、完全に記述される事がわかります。 gとhは任意に与えられます。これがこの場合の2階の偏微分方程式の解の、関数2個分の不定性です。 この事情に関しては、2階の常微分方程式の解の不定性が、2個の任意定数に由来するのと同じですが、 「任意関数」のタイプが、偏微分方程式の種類に依存する事も見て取れます(常微分方程式に、 任意定数のタイプという考えはありません)。
 1次元の波動方程式(8)の場合、任意関数のタイプは、2個の任意の1変数関数g(x),h(t) というものでした。 一方(7)において、ξ=x−ct と η=x+ct は、2つの独立した変数なので、

    (10)

は、2個の任意の1変数関数の和になっています。変換(x,t)→(ξ,η) は変数変換なので、(10)の関数の任意性は、2個の任意の1変数関数g(x),h(t) の任意性と本質的に同等になり、境界条件に由来する解の不定性を表わしている事になります。したがって(7)は、(8)の一般解です。  境界条件に関する以上の事情に注意して、次に2次元の波動方程式、

    (11)

に進みます。1次元のときと同様に、微分作用素の分解を行っても、あんまり上手くいきません。

 

と相互作用項が出てしまうからです。このためもあってか、 2次元以上の波動方程式の形式的一般解の話は、ほとんど聞いた事がありません。 理論上(11)の解には変数分離形を仮定して、フーリエ級数かグリーン関数法に持ち込むのが普通です (解法に一般性があるので)。実用上は、差分法や有限要素法で数値的に解きます。 これに対して1次元の波動方程式の形式的一般解は、理論上も実用上も同じくらいに有用です。
 こういう状況ですが、ここでは(11)が、波動を表わす事を(電磁波が存在する事を)定性的に見たいので、 形式解の導出を試みます。

 とはいえ2次元以上で形式解を扱っている本は見た事もないので、以下の議論には不備がある可能性大です。 ぜひ不備をご指摘頂ければ、幸いです。

 微分作用素の分解が上手くいかないので、以下では解が見つかっちゃったぞ方式をとります。 つまりいくつかの解候補を探してきて、一般解になるかどうか判定します。 判定条件はもちろん(9)ですが、(9)を適用するためには、境界条件のタイプを決める必要があります。 2次元の場合は、

  t=0 において、A=g(x,y).
  x=0 において、A=h1(y,t).
  y=0 において、A=h2(x,t).  (12)

となります。
 ここで1次元の作用素の分解を、別の角度から見てみます。

    (13)

と書けます。2次形式論を用いれば、適当な線形変換(x,t)→(p,s) によって(13)は、

 

に出来るはずです。
 それこそが、

 

でした。
 重要なのは、この方法は一般化できる事です。 (11)に対して適当な線形変換L:(x,y,t)→(ξ,η,τ) を行う事により(11)は、

    (14)

の形に出来ます。そして境界条件(12)から、

    (15)

を仮定できます。ここでf1,f2,f3 は、任意の関数です。(15)を(14)に代入すれば、

    (16)

になりますが、(16)においてf1,f2,f3 は互いに関連付けられているので、 このままでは独立な任意の関数になれません。f1,f2,f3 が条件(16)を満たし、 かつ独立な任意の関数であるためには(16)は、恒等式、

 

になる必要があります。よって、

    (17)

です。そうすると、それぞれの項は1次元の波動方程式なので、その一般解は、

 

とわかっています。ui,vi は任意の関数です。これらを(15)に代入して、3つ足せば、

 

となり、ui,vi が任意関数である事を使うと結局、

    (18)

とおける事がわかります。ここでf1,f2,f3 は、再び任意の関数です。 ξ,η,τの具体的な形は、線形変換L:(x,y,t)→(ξ,η,τ) を定めれば、 出てきます。Lを定めるために、

    (19)

とおきます。αi,βi,γi は定数です。

 

と書けます。ここでは、αi,βi,γi を面倒にしないために、

    (20)

の形のものをさがします。右辺を直接計算します。

 

 上記のSym.は、対称行列の意味です。上記と(20)により、

    (21)

    (22)

が得られます。αi,βi,γi,i=1〜3 は9個ありますが、条件(21),(22)は6個です。 よって内3個は勝手に決められます。そこで(21)から、

    (23)

と決めます。従って(22)より、

 

とおけるので、

 

です。これより(23)から、

 

が得られます。従って(19)より、

 

なので、

 

となり、

 

ですが、これらは、

    (24)

と表わせます。ここでn1,n2,n3 は、(x,y) 平面の単位ベクトルで、 互いにπ/3 だけずれていて、r=(x,y) です。(18),(24)より、2次元の波動方程式の形式的一般解は、

    (25)

と決まります。(25)は、3方向の1次元波動の重ね合わせである事がわかります。 1次元というのは、各fi は、niへのrの正射影距離xi=ni・r で、 1次元の波動方程式の解、fi(xi±ct) と等価になるからです。
 これで、目出度し目出度しと行きたいのですが、2次元の場合は解析領域の形も問題になります (本当は1次元も)。境界条件(12)は、全空間,全時間を解析領域とした場合です。 しかし2次元の場合には、下図のような解析領域で解きたい場合もあり得ます。

 

 この場合の境界条件は、

  t=0 で、A=g(x,y),(x,y)∈S.
  C上 で、A=h(x,y,t),(x,y)∈C.   (26)

となります。境界条件(26)の指定は、(12)と本質的には変わらないのですが、 (26)から直接導かれる解Aの形は、(18)ではありません。そこで次のように考えます。
 波動方程式(11)と境界条件(26)のもとでS上に解Aが定まるなら、 Sの外部にも外部解A'が定まるはずです。何故なら、Sの外部でも波動方程式(11)が成り立つとして、

  t=0 で、A'=g'(x,y),(x,y)∈Sの外部,g'(x,y)はC上で、S上のg(x,y)と滑らかにつながる.
  C上 で、A'=h(x,y,t),(x,y)∈C.   (27)

という境界条件は可能です。
 従ってS上のAと滑らかにつながる、Sの外部解が存在する事になります。 S上の解とSの外部解を用いれば、t=0 における全空間のg(x,y) と、 x=0,y=0におけるh1(y,t),h2(x,t) を定義する事ができます。 よって(26)を導くような境界条件(12)の構成は可能になり、 この場合にも(25)は、一般解の資格があります。
 さて、3次元、

    (28)

の場合です。2次元の場合で本質的な部分は尽くされている(と思える)ので、概略にとどめます。
 境界条件は、

t=0 において、A=g(x,y,z).
x=0 において、A=h1(y,z,t).
y=0 において、A=h2(x,z,t).
z=0 において、A=h3(x,y,t). (29)

です。適当な線形変換L:(x,y,z,t)→(ξ,η,ζ,τ) を行う事により(28)は、

    (30)

の形に出来ます。そして境界条件(29)から、

    (31)

を仮定できます。ここでf1,f2,f3,f4 は、任意の関数です。(31)を(30)に代入すれば、

    (32)

になりますが、(32)においてf1,f2,f3,f4 は互いに関連付けられているので、 このままでは独立な任意の関数になれません。f1,f2,f3,f4 が条件(32)を満たし、 かつ独立な任意の関数であるためには(32)は、恒等式、

 

になる必要があります。よって、

 

です。しかしこれでもまだ、f1,f2,f3,f4 は互いに関係しているので、例えばf1 では、

 

でなければなりません。1番目の条件より、

 

となりますが、これを2番目,3番目の条件に代入すれば、

 

とおけます。よって、

 

の形になり、Ki〜Ni が任意の関数である事から、あらためて、

 

とおけます。ξ,η,ζ,τの具体的な形は線形変換L:(x,y,z,t)→(ξ,η,ζ,τ) を定めれば得られます。ここではそれは省略しますが(もうやりたくない・・・)、

    (33)

となるであろうことは、容易に想像できます。(x,y,z) 空間の単位ベクトルn1〜n4 には、 何らかの拘束条件が付くはずです。またr=(x,y,z) です。 結局3次元の波動方程式の解も、4方向の1次元の波動方程式の解の重ね合わせになっています。 従って(33)も、何らかの波動現象を表わしています。3次元の場合も、 任意の解析領域に対する考え方は同じです。

NO.1783    三角形の個数   2009.4.13.  水の流れ

第223回数学的な応募問題


先日、大学入試問題を見ていて改題しました。

問題1 m,nを2以下の自然数とするとき、座標平面上に座標が(m,n)である格子点 が4個ある。このうちの3点を頂点にもつ三角形の個数を求めよ。

問題2 m,nを3以下の自然数とするとき、座標平面上に座標が(m,n)である格子点 が9個ある。このうちの3点を頂点にもつ三角形の個数を求めよ。

問題3 m,nを4以下の自然数とするとき、座標平面上に座標が(m,n)である格子点 が16個ある。このうちの3点を頂点にもつ三角形の個数を求めよ。

問題4 m,nを5以下の自然数とするとき、座標平面上に座標が(m,n)である格子点 が25個ある。このうちの3点を頂点にもつ三角形の個数を求めよ。

注:この記事に関する投稿の掲載は、2009年5月4日以降とします。

NO.1782   多項式の余り(2)    2009.4.13.  夜ふかしのつらいおじさん

問題1
(1)


(2)


問題2
(1)


(2)


問題3





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