Weekend Mathematics/コロキウム室/1999.4〜6/NO.56
NO.474 | '99 5/15 | 水の流れ | 宇宙空間での最短経路問題(9) |
コロキウム室NO.313「宇宙空間での最短経路問題」の解説をします。
まずは、NO.399を見てください。ここで、シュタイナーのネットワークから、
∠DAM=30゜になっています。
図2を参照しましょう。
この場合1辺の長さを1としてあります。
したがって、宇宙空間における8つの研究施設を結ぶ最短経路の長さは1辺が10mですから、61.96mで結ばれます。
ところで、太郎さんは設計図がうまく書けなくて困っています。
これまでのイメージを参考にして、皆さん考えてください。
NO.475 | '99 5/15 | 水の流れ | 立方体の展開(2) |
コロキウム室NO.314「立方体の展開図」の解説をします。
6つの正方形からなる普通の展開図は11通りありますが、
すべて切り開いた周の長さの合計は70cmになります。
そこで、切断する長さが70cmより短い方法を順に太郎さんは考えました。
<方法1>立方体の上面を2つの対角線に沿って切る場合です。
切断する長さは40+20√2≒68.3cm になります。
<方法2>立方体の上面と下面の対角線とその2つの面を結ぶ辺を切る場合です。
切断する長さは10+40√2≒66.6cm になりさらに短くなります。
<方法3>立方体の上面と下面にシュタイナーのネットワークを使います。
このシュタイナーのネットワークはNO.393を参照してください。
切断する長さは30+20√3≒64.6cm にしかなりません。
これが最も短い切断方法です。
尚、シュタイナー(1796〜1863)はn個の点を結び
最短ネットワークを考えたこで知られています。
NO.476 | '99 5/15 | プ−太 | 最速降下問題 (4) |
サイクロイドが使われている例として、振り子がありますよ。
図@最速降下曲線において、曲線の途中から玉を離しても、
てっぺんから玉を離したのと同時にゴールへたどりつきます。
つまり、曲線のどこから玉を離しても、ゴールへたどりつく時間は同じになります。
(最速降下曲線自身を求めるのは、変分法などを用いて、
図@の主張は微積分を用いて、説明できます)
図Aサイクロイド自身の伸開線は同じくサイクロイドになります。
つまり、サイクロイドに糸を巻きつけて、
図Aの下の端をもって糸をピンとはったままはがしていくと、
糸の端の描く曲線はサイクロイドになります。
(ここら辺は、微分幾何の曲線論です)
図Bそういった性質をつかっていつも同じ周期で振れる振り子がつくれます。
これを等時性といいます。
普通の(軌跡が円である)振り子も等時性をもつのですが、
厳密には違います。
高校物理で、普通の振り子の周期は素材が糸であるか棒であるかにとって
違うが、振り子の長さによってのみ周期が決まる(振れ幅には関係しない)
習った人がいるかもしれません。
しかし、それは振れ幅が小さいときには、
sinθ=θと近似的表わされるとして周期を計算したのです。
(これを厳密にやると、周期は楕円積分で表わされるそうです。)
図Bの振り子は、サイクロイド型の天井に糸でできた振り子を揺らし、
振り子の軌跡をサイクロイドにしようとしたものです。
振れ幅が大きくても、また減衰して小さくなっても、
理論的には完全に同じ周期でゆれます。
ただ、現実的には、天井のサイクロイドに巻き付いている影響は少なく、
ほとんど無意味みたいです。
なかなか面白いとおもいませんか?
NO.477 | '99 5/17 | 水の流れ | オイラーの「無限解析入門(1)」(9) |
オイラーの「無限解析入門(1)」の第5夜の始まり、始まり。
次の等式が基本でしたね。
これらの値はゼーターの特殊値としての解釈ができますし、
自然界にも普通に表れているかもしれません。
たとえば、ラモローさんは1997年に、量子力学において50年間
念願とされてきたカシミール効果をアメリカのシアトルにおける実験で
確認したときの理論値は実質的に
1+8+27+64+・・・=1/120 でした。
無限大になるところをうまく引き去って(繰り込んで)
意味のある有限値を出すことを物理学での言葉で「繰り込み」と言いますが、
上記の値がその一例と考えられます。
オイラーの奇妙な計算が出たついでに、オイラーの最も激しい計算
(発散がゼーターの場合より激しい!)を紹介します。
1!−2!+3!−4!+5!−6!+7!−・・・=0.4036526・・・
<今までのオイラーの「無限解析入門(1)」の原稿は、
「数学の夢 素数からのひろがり 」黒川信重:岩波書店 を参考にして、
多くの引用しています。>
第2夜のときに、以下のことを書きましたね。
ゼーター関数ζ(s)の素晴らしいのはsにどんな複素数を代入しても、
意味を持つという点です。<数学的には「解析接続可能」と言います>
オイラーの見つけた形(1749年)で言いますと、
s≦0のとき、月夜の世界
0≦s≦1のとき、たそがれとき<夕焼け・朝焼け>
1≦sのとき、昼間太陽の世界
とユニークな月のマークと太陽のマークを書いています。
月夜の世界での不思議な計算はここで、終わりにしまして、
昼間の計算に移ります。
オイラーは1735年に、順次ζ(2m)(m=1,2,・・・13)を計算しました。
ζ(26)が最後でした。ちなみに、
ζ(26)=1315862/11094481976030578125・π26です。
実に驚異的な計算能力です。驚嘆するばかりです。
ここで私ことですが、3月,数式処理「Mathematica」の講習会 を受講してきました。 昼休みにこっそりソフトをお借りしまして、 我のオイラーに近づこうと思いまして、ゼーターζ(s)の値に挑戦しました。
Mathematicaは偉大なソフトです。瞬時に計算してくれます。
私の手元に、ζ(2m)(m=1,2,・・・22) の値があります。
ζ(3)の値は出ませんでしたが、オイラーに少しでも近づけたような感動が湧いて来ました。
話を本題に戻ります。
あのベルヌイが研究したベルヌイ数に挑戦していきます。
さて、問題です。
このBnの値をB0からB8まで、求めてください。
これで、第5夜を閉じます。お休みなさい。
NO.478 | '99 5/17 | 浜田 明巳 | 2nの和(1) |
中3の生徒からこんな質問が来ました. 彼は計算が好きらしく,たまたまこんな興味深い計算結果に気付いたそうです. 2n(n≧3)を次のように書き並べて,合計すると9が並ぶというのです.
23 | 8 | |||||||||
24 | 1 | 6 | ||||||||
25 | 3 | 2 | ||||||||
26 | 6 | 4 | ||||||||
27 | 1 | 2 | 8 | |||||||
28 | 2 | 5 | 6 | |||||||
29 | 5 | 1 | 2 | |||||||
210 | 1 | 0 | 2 | 4 | ||||||
211 | 2 | 0 | 4 | 8 | ||||||
・・・ | ||||||||||
合計 | 9 | 9 | 9 | 9 | 9 | ・ | ・ | ・ |
実際にプログラムを作って走らせたところ,
最高5000桁で3494桁まで9が並ぶことを確認しました.
誰かこの原理について,解明,または証明して(あるいは生徒を煙に巻く方法を教えて)
いただけませんでしょうか.恥ずかしながら,私はこういうのが苦手です.
プログラムを組むのが精一杯です.
QBASICプログラム 'noguchi2.qb CLS : max = 5000: DIM a(max), b(max) a(0) = 0: a(1) = 8: b(1) = a(1): keta = 1: kaisuu = 1 FOR j = 2 TO max: a(j) = 0: b(j) = 0: NEXT WHILE b(max) = 0 AND INKEY$ = "": kaisuu = kaisuu + 1 FOR j = 1 TO keta: a(j) = 2 * a(j): NEXT FOR j = keta TO 1 STEP -1 IF a(j) > 9 THEN a(j - 1) = a(j - 1) + INT(a(j) * .1): a(j) = a(j) MOD 10 NEXT IF a(0) = 1 THEN keta = keta + 1 FOR j = keta TO 1 STEP -1: a(j) = a(j - 1): NEXT: a(0) = 0 END IF FOR j = kaisuu - keta + 1 TO kaisuu: b(j) = b(j) + a(j - kaisuu + keta) NEXT FOR j = kaisuu TO 1 STEP -1 IF b(j) > 9 THEN b(j - 1) = b(j - 1) + INT(b(j) * .1): b(j) = b(j) MOD 10 NEXT count = 0: owari = 0: j = 1 WHILE owari = 0 AND j <= kaisuu IF b(j) = 9 THEN count = count + 1 ELSE owari = 1 j = j + 1 WEND LOCATE 1, 1: PRINT 2; "^"; kaisuu + 2; "("; keta; "keta)" PRINT 9; "->"; count: PRINT "others->"; kaisuu - count WEND: WHILE INKEY$ <> "": WEND: END
NO.479 | '99 5/18 | Junko | 2nの和(2) |
例えば、210までに区切って考えてみました。
S=23・107+24・106+25・105+
26・104+27・103+28・102+
29・1010+210
これは、108より少し小さい数(曖昧な表現ですが・・・)ということです。
実際には、99,999,744となり、108−28=100,000,000-256と
なっています。
一般に2Nまで計算すると、
これは、10N-2−2N-2と表現してもいいわけですが、
上からかなりの桁まで「9」が並ぶだろうことがわかります。
NO.480 | '99 5/18 | 月の光 | 2nの和(3) |
まずSnを次のように考えます。
S3=8
S4=80+16=96
S5=800+160+32=992
…
Sn=23×10(n-3)+24×10(n-4)+…
+2n×100
となります。
nが大きいとき10(n-2)は 2(n-2)に比べてとても大きいので
9がいくつも続くというわけです。
また、10(n-2)は(n-1)桁、2(n-2)は [(n-2)log2+1] 桁だから、
Snは上から(n-2)-[(n-2)log2] 個9が続きます。
Snは(n-2)桁なのでS5002は5000桁、5000-5000 log2=3494.85…なので
上から3494個の9が並びます。
[ ]はガウス記号です。
NO.481 | '99 5/19 | 月の光 | 2nの和(4) |
2の代わりに5でも上から9が並びます。
2のときと同じようにTnを n≧1で次のようにします。
T1=5
T2=50+25=75
T3=500+250+125=875
…
Tn=51×10(n-1)+52×10(n-2)
+53×10(n-3)+…
+5n×100
これもnが大きいとき10nは 5nに比べてとても大きくなりますが、
2nのときほど差は大きくないので、
上から連続して並ぶ9の個数は少なくなります。
その個数は n-[nlog5]なのでTnが5000桁のとき
5000-[5000log5]=1505 個となって2のときの 3494個の半分以下になります。
SnとTnの値をいくつか書いてみます。
T1=5 | |
T2=75 | |
S3=8 | T3=875 |
S4=96 | T4=9375 |
S5=992 | T5=96875 |
S6=9984 | T6=984375 |
S7=99968 | T7=9921875 |
S8=999936 | T8=99609375 |
S9=9999872 | T9=998046875 |
S10=99999744 | T10=9990234375 |
… | |
T20=9.999990463E+19 |
NO.482 | '99 5/20 | 浜田 明巳 | 置換積分(1) |
97年の大阪府立大学入試問題で,
「座標平面上に,原点Oを中心とする半径2の固定された円Cと,
それに外側から接しながら回転する半径1の円C'がある.
円C'の中心が(3,0)にあるときのC'側の接点に印Pをつけ,
円C'を円Cに接しながら滑らずに回転させる.
点Pの描く曲線で囲まれた領域の面積を求めよ.」
というのがありました.
解答は,
P(x、y)とし,OAのx軸とのなす角をθとすると,
x=3cosθ−cos3θ,y=3sinθ−sin3θ(0≦θ<2π)
という標準的な置換積分の計算です.
この問題を次のように解いた生徒がいるのです.
この解答のどこが違っているのか,というのが質問なのです.
ΔS | =Δθ(x2+y2)/2 |
=Δθ{(3cosθ−cos3θ)2+(3sinθ−sin3θ)2}/2 | |
=Δθ(5−3cos2θ) |