Weekend Mathematicsコロキウム室1999.1〜3/NO.50

コロキウム室



NO.421    '99 3/29    Junko   「素数の話」
  

3/28学習院大学において、日本数学会の主催する市民のための数学講演会をきいてきました。 前半は学習院大学の中島匠一先生による「素数の話」でした。 『素数』ときいて、これはいかなくちゃ!と思ったわけです。 素数についての入門的な話しということで1時間の講演でした。 内容を簡単に紹介します。

・素数の定義に始まって、素因数分解の一意性、 素数が無限に存在することのユ−クリッドによる証明。 (NO.404)

・素数の分布について、素数を与える公式のようなものは存在しないこと。

・素数を小さい順に並べて、n番目をpとかくとします。 d=pn+1−pとします。 つまり、素数と次の素数との差です。 2以外の素数は全て奇数ですから、n≧2ならば、d≧2です。
このdはいくらでも大きいものを見つけることができる。
また、d=2のとき、pn+1とpを 「双子素数」といいます。 例えば、3と5、17と19などです。 「双子素数」は無限に存在するだろうと予想されていますが、証明はされていません。

・問題が出されています。
「双子素数」にならって「三つ子素数」を定義し、その例を2つ以上挙げよ。
というものです。(最近どうも3兄弟がはやっているようで・・・。)


そして、いよいよゼ−タ−関数の登場です。


というわけで、ほとんどが最近コロキウム室の話題になったことばかりでした。




NO.422    '99 3/29    Junko   ニュ−トンのリンゴ(1)
  

この講演会の後半は、慶応大学(この4月からは九州大学だそうです。)の松本眞先生による 「リンゴが落ちたって、万有引力は発見できないさ」という講演でした。
ニュ−トンがリンゴの落ちるのを見て、万有引力の法則を発見したという話は有名です。 しかしこれは、「どうやって万有引力の法則を発見したのですか?」と聞かれたニュ−トンが その場のうけをねらって答えたか、もしくは誰かの作り話かそんなところだと私も思います。

ニュ−トンは、F=GMm/rが成り立つであろう根拠として、

  1. 30年に渡る他人(チコ・ブラ−エ)の惑星の観察から導かれたケプラ−の あまたの惑星運動の法則のうちの3つ
  2. 当時新しく発見された彗星の動き
  3. 木星の衛星の蝕の周期
  4. 木星の歪み方
  5. 潮の満ち引きとその度合
  6. 赤道におけるふり子時計の狂い
などなど、あまたの例をあげ、実験観測しました。 そして、1.に対して綿密な微積分を含む計算を行い、 二点間に働く力はGMm/rに比例するとしか思えない、 という結論に達しています。 そこで使われている幾何学・解析学は、かなり高度なものです。
万有引力の発見に、一見無駄に見えるような観察、数学、物理学が、 どれほど使われてきたか。それを見つけた叡知がどんなふかいものか。ということです。
しかし、人々はリンゴの話しにすりかえられて、真実をみないでわかった気になる。

ニュ−トンは極めて多くの具体的観察事項を検討し、 それらのすべてがある抽象化された簡単な方程式、 つまり万有引力の法則と力学の基本方程式(F=ma)という微分方程式によって、 説明がつくことを示し、理論と観察の誤差も行いました。
この、具体と抽象を行き来するということが、数学の本質であると思います。

世の中は、抽象的な思考は「机上の空論」で、そういうものは最小化しろという。 社会のニ−ズに答えろという。
ニュ−トンの時代の社会のニ−ズに、もしニュ−トンが答えていたら、 万有引力は発見されたでしょうか? ニュ−トンの発見は社会のニ−ズに答えていたでしょうか?
(講演のレジメから引用しました。)

実際に平面幾何(円錐曲線の理論)等を使って、 ニュ−トンが万有引力の法則を発見するにいたった経路の一部を示してくださいました。
具体的なもの、社会の役に立つと思われるものへの偏りが学問を衰退させてしまう、 という危惧を訴えているように感じました。



NO.423    '99 3/29    Junko   ゼーター関数物語(47)
  

NO.416ゼーター関数ζ(2)物語第14夜の 問題に対する解答です。






NO.424    '99 3/30    Weadore   ニュ−トンのリンゴ(2)
  

NO.422では、ニュートンさんはリンゴを落ちるのを見て、 万有引力を発見したと言ってますが、多分、Junkoさんは この意味の解釈を間違ってしまっていると思います。

元々、自然の解析をするのに、地上のことは地上のこと、 天体のことは天体のこと。っていう風に分かれていました。 そしてそれぞれは、色々な頭の良い学者達によって 築き上げられました。
それで、ニュートンも同じ研究者でありました。 でも、ニュートンは元来全く関係を持たなかった、 地上のことと、天体のこととを同じ現象である、ということを リンゴが落ちるのと天体が周るのが同じであると例えたのです。
つまり、引力や重力がどうこういう問題をあの言葉では言ってるのではなく、 今まで関係を持たなかった二つの学問を一つの学問。 つまり、「物理学」としてまとめあげたのです。 このニュートンから、物理学はできるだけ少ない法則で 成り立つはずだというベクトルで発達したのです。
もちろん、ニュートンはそれだけではなく、 コロキウム室に書かれたとおり、かなりすごい人です。(^^ゞ
ただ、あの言葉では、ただ物理学の方針を決めたという意味しか 持っていません。(^^;;;
でも、まぁ結局今では、ニュートン力学は相対論、量子論に負けていますが、 今でも、ニュートンのように一つの理論にできないかということで、 結局ニュートンが決めた物理学の方針は変わっていないのです。
つまり、あの言葉で一番重要なのは「万有」の部分です。(^^ゞ



NO.425    '99 3/31    Junko   ニュ−トンのリンゴ(3)
  

私のことばが足りなかったせいで、誤解を招いているように思います。
「リンゴが落ちたって、万有引力は発見できないさ」
このタイトルの意味するところを私なりに解釈すると、 ニュ−トンのような天才でさえ、ただリンゴが落ちるのを見ただけで 偉大な法則を発見したのではない、その影には膨大なデ−タの分析や、 地道な計算、そして深い知識と洞察力などがあったということだと思います。 そういったものをおろそかにしてはならない、特に目先の利益にとらわれずに 基礎的な学問を究めるというのは重要なことである、ということだと思います。







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