Weekend Mathematics問題/問題29

29.オレンジの問題

今年もスミス氏のもとへ、カリフォルニアの友人からたくさんのオレンジが送られてきました。
息子のジョン君、娘のメアリ−さん、スミス氏と、3人で平等に分けたいと思います。 でも、オレンジの個数が3で割り切れるとは限りません。どうしたらいいでしょう。 思案の末、スミス氏は名案を思いつきました。
3人で分けるのですから、ちょうど分けられるか、 1個余るか、2個余るかのいずれかしかありません。 しかも、その確率は等しいと考えてよいでしょう。
もし1個余ったら、スミス氏がそれをもらうことにします。 その確率は1/3です。
もし2個余ったら、ジョン君とメアリ−さんが1個ずつもらうことにします。 この確率も1/3です。
こうして全体としては、1個余分にもらえる確率が、3人とも平等になるというわけです!

さてそこへ、ひょっこりおばあちゃんがやってきました。 4人で公平に分ける、同じような方法があるでしょうか?
「半分こ」をしてよければどうでしょう?





問題の出典


ひらめき思考 PartV

I.C.フリッカ−編

日経サイエンス社






答えと解説












答えと解説

解答・その1

(ペンネ−ム:かに)

4人で公平に分ける同じような方法はありません。
ただし、半分こしてよければ4人で公平に分けることができます。
ABCDの4人において、オレンジが1個余ったらAとBで半分こして オレンジをもらいます。2個余ったら半分こしてABCDの4人でもら います。3個余ったらAとBで半分こしたオレンジをもらい、CとDは オレンジを1個ずつもらいます。
このようにすると全体としては、1個半余分にもらえる確率が4人 とも平等になると思います。



解答・その2

(ペンネ−ム:みや)

1.4人で分けることは出来ない。

2.半分こする場合
それぞれにn個づつ配り、余りを以下の表のようにします。

余り0余り1余り2余り3
一郎1/21/21/2
次郎3/2
三郎1/2
四郎3/2

これで全員期待値3/8個で平等である。

蛇足
この配り方は平等とは言いきれないという結論を無理やり導いてみます。
全員、オレンジをn個もらったときの嬉しさを とします。

(注)
それぞれの嬉しさの期待値は



よって嬉しさの期待値は一郎が一番高い。

(注)
なぜn個もらったときの嬉しさをnではなく にしたかというと 例えばオレンジ2個もらったときは嬉しいですね。 しかし98個もらったときと100個もらったときの嬉しさは同じですね。 それで嬉しさをルートで表しました。 だからこの例でも、まず10個づつ配り余りを上のように 分けたとしたら嬉しさの期待値はほとんど同じになるはずです。
10個配った後に余りを上の表のように分けると (オレンジが40から43のとき)

余り0余り1余り2余り3
一郎1021/221/221/2
次郎101023/210
三郎1021/21011
四郎10101023/2

でこのときの嬉しさの期待値が
一郎 3.2209
次郎と四郎   3.2195
三郎 3.2204
嬉しさの期待値はほとんど同じになります。
10個ももらってしまったあとでは割り切れなかった余りをもらっても 嬉しさはあまり変わらないということです。



解答・その3

(ペンネ−ム:Weadore)

最初にあるオレンジの数をmod8で場合分けして考えます。

0,4の場合は、(A,B,C,D)に(1,1,1,1)、
1の場合は、(A,B,C,D)に(0,1,0,0)、
2の場合は、(A,B,C,D)に(0,0,2,0)、
3の場合は、(A,B,C,D)に(0,0,0,3)、

5,6,7の場合は、まず、(A,B,C,D)に(1,1,1,1)と、わける。その後、
5の場合は、(A,B,C,D)に(1,0,0,0)、
6の場合は、(A,B,C,D)に(0,2,0,0)、
7の場合は、(A,B,C,D)に(0,0,3,0)、で分けます。

こうすれば、オレンジをもらえる数の期待値は等しくなります。
(∵縦に数を足してみればすぐ分かる。)

ただ、この上の例だと、あまり平等に見えないので、 後は、多少見た目上の問題で場合分けのところで、 一人一個ずつ渡せば良いと思います。
ここで、1,2,3と5,6,7をうまく対称的にするとうまく行きます。

半分こをしてOKの場合は、mod4で場合分けして、

0の場合は、(A,B,C,D)に(1,1,1,1)、
1の場合は、(A,B,C,D)に(1,0,0,0)、
3の場合は、(A,B,C,D)に(0,1,1,1)、
2の場合は、(A,B,C,D)に(0.5,0.5,0.5,0.5)
っと分ければ、平等に配れる。



解答・その4

(ペンネ−ム:浜田 明巳)

 A,B,Cの3人にオレンジを分けるとし,次の表のようにまとめます.

余り

ようするに,A,B,Cの3人に余りの合計0+1+2=3を公平に分配すればよい. これは明らかに可能です.
ところが,A,B,C,Dの4人の場合だと,

余り

となり,公平に分配することができない. これは(0+1+2+3)÷4=6÷4が割り切れない事に起因します.
「半分こ」をしてよいとき,例えば

余り
1/21/2
1/21/21/21/2
1/21/2

とすればよいでしょう.これは(0+1+2+3)÷4=3×(1/2)であることに起因します.
つまり例えば,1個余れば半分こにして,スミス氏とおばあちゃんに分けます.
2個余れば2個とも半分こにして,4人に分けます.
3個余れば1個を半分こにしてスミス氏とおばあちゃんに分け,残りの2個を子供達に分けます.
そうすると,期待値は
E(スミス氏)=E(おばあちゃん)=3×(1/4)×(1/2)=3/8
E(ジョン君)=E(メアリーさん)=(1/4)×(1/2)+(1/4)×1=3/8
とすべて等しくなり,公平になります.



解答・その5

(ペンネ−ム:ちゃめ)

4人で公平に分けるということを、 「4人それぞれの、余分にもらえる個数の期待値が等しい」ことと考える。
3で割る場合と同様、4で割って、余りが0,1,2,3となる確率はすべて 1/4であるとしてよい。
すると、4で割って余る個数の期待値は、(0+1+2+3)/4 = 3/2(個)
であるから、4人それぞれが、 余分にもらえる個数の期待値が 3/8 個となるような方法を考えればよい。

以下、4人の区別は考慮せずに、分ける個数の組み合わせだけを考えることにする。 4人を、x , y, z, w と表す。
4で割った余りがk個(k=1,2,3)であるときにxがもらう個数をx(k)と表す。 x(k)は非負の整数である。 xが余分にもらう個数の期待値が3/8となるために、
x(1)+x(2)+x(3) = 3/2
でなければならないが、これを満たす非負の整数x(k)(k=1,2,3)は存在しない。 よって、公平な分け方はできない。

次に、「半分こ」可能な場合を考える。
上で定めた x(k) を 1/2個を単位として表した数、 すなわち 2x(k) をあらためて x(k) と置く。 x(k)は非負の整数。 y(k), z(k), w(k) も同様に定める。

各人が余分にもらう個数の期待値がすべて3/8となるために、
x(1)+x(2)+x(3)=3 ・・・(1)
y(1)+y(2)+y(3)=3 ・・・(2)
z(1)+z(2)+z(3)=3 ・・・(3)
w(1)+w(2)+w(3)=3  ・・・(4)

また、文字の定め方から、
x(1)+y(1)+z(1)+w(1)=2 ・・・(5)
x(2)+y(2)+z(2)+w(2)=4 ・・・(6)
x(3)+y(3)+z(3)+w(3)=6 ・・・(7)

(1)から(7)を満たす非負整数解が存在すれば公平な分け方が可能。
x(k), y(k), z(k), w(k) に関する対称性から、 x(3)>=y(3)>=z(3)>=w(3)としてよい。
x(3)<=3だから、(7)から、
(x(3), y(3), z(3), w(3))=(3,3,0,0), (3,2,1,0),(3,1,1,1),(2,2,2,0),(2,2,1,1,)

  1. (x(3), y(3), z(3), w(3))=(3,3,0,0) のとき。
    (1),(2)より、x(1)=x(2)=y(1)=y(2)=0
    zとwの対称性からz(2)>=w(2)とすると、 式を満たす組み合わせは、
    (z(1),z(2),w(1),w(2))=(0,3,2,1),(1,2,1,2) となる場合の2通りが存在。

  2. (x(3), y(3), z(3), w(3))=(3,2,1,0)のとき。
    (1)より、x(1)=x(2)=0
    (2),(3),(4),(5),(6),(7)を満たす組み合わせは、
    (y(1), z(1), w(1))=(1,1,0),(1,0,1),(0,1,1),(0,2,0),(0,0,2) となる場合の5通りが存在。

  3. (x(3), y(3), z(3), w(3))=(3,1,1,1)のとき。
    x(1)=x(2)=0
    対称性から、y(1)>=z(1)>=w(1)とすると、
    式を満たす組み合わせは、
    (y(1),z(1),w(1))=(2,0,0),(1,1,0) となる場合の2通りが存在。

  4. (x(3), y(3), z(3), w(3))=(2,2,2,0)のとき。
    対称性から、x(1)>=y(1)>=z(1)とすると、 式を満たす組み合わせは、
    (x(1),y(1),z(1))=(1,1,0),(1,0,0),(0,0,0) となる場合の3通りが存在。

  5. (x(3), y(3), z(3), w(3))=(2,2,1,1)のとき。
    対称性から、x(1)>=y(1)、
    z(1)>=w(1)とすると、 式を満たす組み合わせは、
    (x(1),y(1),z(1),w(1))=(1,1,0,0),(1,0,1,0),(0,0,2,0),(0,0,1,1) となる場合の4通りが存在。

以上から、「半分こ」を許す場合は公平な分け方が可能である。
ある一人が、余りが1、2、3個の場合にもらう個数を a1,a2,a3とするとき、 これを(a1,a2,a3)のように表し、このような三つ組み4つを[ ]に入れて 一つの分け方を表すとすると、次の16通りの分け方がある。

[(0, 0, 3/2)(0, 0, 3/2)(0, 3/2 0)(1, 1/2 ,0)]
[(0, 0, 3/2)(0. 0, 3/2)(1/2, 1, 0) (1/2 ,1, 0)]
[(0, 0, 3/2)(1/2, 0 ,1)(1/2, 1/2, 1/2)(0, 3/2, 0)]
[(0, 0, 3/2)(1/2, 0, 1)(0, 1, 1/2)(1/2, 1, 0)]
[(0, 0, 3/2)(0, 1/2, 1)(1/2, 1/2, 1/2)(1/2, 1, 0)]
[(0, 0, 3/2)(0, 1/2, 1)(1, 0, 1/2)(0, 3/2 0)]
[(0, 0, 3/2)(0, 1/2 ,1)(0, 1, 1/2)(1, 1/2 ,0)]
[(0, 0, 3/2)(1, 0, 1/2)(0, 1, 1/2)(0, 1, 1/2)]
[(0, 0, 3/2)(1/2, 1/2, 1/2)(1/2, 1/2, 1/2)(0, 1, 1/2)]
[(1/2, 0, 1)(1/2, 0 ,1)(0, 1/2, 1)(0, 3/2, 0)]
[(1/2, 0, 1)(0, 1/2, 1)(0, 1/2, 1)(1/2, 1, 0)]
[(0, 1/2, 1)(0, 1/2, 1)(0, 1/2, 1)(1, 1/2, 0)]
[(1/2, 0, 1)(1/2, 0, 1)(0, 1, 1/2)(0, 1, 1/2)]
[(1/2, 0, 1)(0, 1/2, 1)(1/2, 1/2, 1/2)(0, 1, 1/2)]
[(0, 1/2, 1)(0, 1/2, 1)(1, 0, 1/2)(0, 1, 1/2)]
[(0, 1/2, 1)(0, 1/2, 1)(1/2, 1/2, 1/2)(1/2, 1/2, 1/2)]





解答・その6

(ペンネ−ム:荒城 清美)

4人でわけるから

のいずれか。 だから平等にわけられる。



解答・その7

(ペンネ−ム:ちょま)

スミス氏、ジョン君、メアリ−さん、おばあちゃんを A、B、C、Dと書くことにします。 この4人で余ったオレンジを公平に分ける方法を(1)〜(3)の順 に考えてみました。

  1. まず、3個のときと同じように、 オレンジを切らないで分けることを考えてみます。
    1個余ったら、Aが1個もらう。この確率は1/4。
    2個余ったら、B、Cが1個ずつもらう。この確率も1/4。
    3個余ったら、Dが1個もらう。残りの2個は・・・
    うまく分けられそうにありません。

  2. 今度はオレンジを「半分個」にしてよいことにします。
    1個余ったら、A、Bが半分個ずつもらう。この確率は1/4。
    2個余ったら、A、B、C、Dが半分個ずつもらう。この確率も1/4。
    3個余ったら、A、Bが半分個ずつもらい、C、Dが1個ずつもらう。 この確率も1/4。

    半分個もらえる確率と、1個もらえる確率が4人とも同じではないので、 ここでは期待値(もらえると期待できるオレンジの個数)を考えてみます。
    A、Bは 1/2×1/4+1/2×1/4+1/2×1/4=3/8
    C、Dは 1/2×1/4+1×1/4=3/8
    となり、4人とも3/8個と等しくなります。

    でも、A、Bは3/4の確率でオレンジをもらうことができるのに比べ、 C、Dは1/2の確率でしかオレンジをもらえません。 また、A、Bはもらえるとしても半分個なのに、 C、Dは1個まるごともらえる可能性もあり、 公平とは言いにくいです。

  3. では、「半分個」にしてよい場合で、2.とは別の分け方にしてみます。
    1個余ったら、A、Bが半分個ずつもらう。この確率は1/4。
    2個余ったら、C、Dが1個ずつもらう。この確率も1/4。
    3個余ったら、A、Bが1個ずつもらい、C、Dが半分個ずつもらう。 この確率も1/4。

    期待値は4人とも 1/2×1/4+1×1/4=3/8 で2.と同じですが、1個余分にもらえる確率が4人とも1/4、 半分個余分にもらえる確率が4人とも1/4になります。
    この3.の分け方なら、4人とも平等だと言うことができます。
最初は、期待値が4人とも同じなら公平かと思って 2.までしか考えていませんでした。 でも、私なら半分個だとしても3/4の確率でオレンジをもらえた方がうれしいし、 もし4人がみんなそのように考えていたら2.の分け方では 公平ではないと思って、3.を考えました。

平等に分けるというと、残ったオレンジを人数分に切って 分けてしまいそうです。
この問題のように、余分にもらえる確率を平等にするというのは、 おもしろい考えで、本当に名案だと思います。




正解者

かに,みや,Weadore,浜田 明巳,ちゃめ,荒城 清美,ちょま



まとめ

もしオレンジが余ったら、オレンジジュ−スを作って皆で飲む、
なんて答えたら怒られてしまうかな?

さて4人で公平に分配できないのは、「浜田 明巳」さんのご指摘通り、 可能性のある余りの総和が人数で割り切れないことで説明できます。
(0+1+2+3)÷4=6÷4
一般にN人で分配しようとすると、可能性のある余りの総和
0+1+2+3+・・・+(N−1)=N(N−1)/2が人数Nで割れるかどうかが問題になります。


  1. Nが奇数のとき
    (N−1)は偶数になりますから、(N−1)/2は整数になり、従ってNで割り切れます。
    ですから、公平な分配が可能です。
  2. Nが偶数のとき
    (N−1)は奇数ですから、(N−1)/2は整数になりません。 従ってNで割り切れません。公平な分配は不可能です。
    しかしながら、半分個を許せば大丈夫です。 (それ以上オレンジを細かく切る必要はありません。)

では具体的に分配方法を示します。
  1. Nが奇数のとき

    N人の人間をA1、A2、・・・ANとします。
    余り12 ・・・N/2N/2+1 ・・・N-1N
    ×× ×××××
    × ×××××
    ×××××
    ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・
    (N-1)/2××××
    (N+1)/2××× ×
    ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・
    N-2××
    N-1×


    余り1と余り(N−1)、余り2と余り(N−2)、・・・余り(N−1)/2と余り(N+1)/2をそれぞれ ペアにして、全員がどちらか一方だけでもらうということにすればいいわけです。

  2. Nが偶数のとき

    余り12 ・・・N/2N/2+1 ・・・N-1N
    ×× ×××××
    × ×××××
    ×××××
    ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・
    (N/2)-1×××××
    N/2
    (N/2)+1×××
    ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・
    N-2××
    N-1×


    先ほどと同様に、余り1と余り(N−1)、余り2と余り(N−2)、・・・余り(N/2)−1と余り(N/2)+1をそれぞれ ペアにして、全員がどちらか一方だけでもらうということにすればいいわけです。
    しかしながら余り(N/2)だけが単独で残ってしまいます。 そこで、ここだけは全員で半分個をします。


この分配方法なら、人数が増えたとしても機械的にできると思います。 「ちょま」さんのいう平等感もあると思いますしね・・・。 ただし、もちろんこれは分配の仕方のほんの1例に過ぎません。
分配の仕方をすべて挙げるのは大変です。 N=4のケ−スについては、「ちゃめ」さんが16通り (人間の区別は考慮せずに、分ける個数の組み合わせだけを考える) ということを示してくださいました。
さて、一般的には何通りの分配ができるのでしょうね?



コロキウム室 NO.508 に関連した話題があります。


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