Weekend Mathematics問題/問題12

12.錠剤の問題

  1. 薬屋さんに錠剤の入ったびんが10個送られてきました。 それぞれのびんには、1粒が100mgの錠剤が1000個入っています。 薬剤師のホワイト氏がちょうど薬びんを棚の上に並べ終えたところに、 電報が届きました。 ホワイト氏は、店の管理人のブラック嬢に電報を読んできかせます。
    「緊急連絡。 送付致しました薬びんを、 販売する前に必ずすべてチェックしてください。 不注意により、10個のうち、 1個のびんに他のびんの錠剤より10mg重い錠剤を詰めてしまいました。 至急、間違っている薬びんをご返送くださいますようお願い致します。」
    ホワイト氏は大弱り。
    「やれやれ、10個のびんから1粒ずつ取り出して 重さを計らなくちゃならん。 何て面倒なんだろう。」
    ホワイト氏が重さを計り始めようとしたとき、ブラック嬢が止めました。
    「ちょっと待ってください。はかりを10回も使わずにすみますよ。 1回でいいんです。」
    どうやったら1回ですむのでしょうか?

  2. 他の錠剤より10mg重い錠剤の入ったびんが1つとは 限らないとしたら、 あなたならどうしますか?
    この場合もやはりはかりを1回使うだけで見破ることができます。 どうしたらよいでしょうか?





問題の出典


別冊サイエンス

ひらめき思考

日本経済新聞社


答えと解説












答えと解説

(1)回答・その1

(ペンネ−ム:らびゅん)

10個のびんにそれぞれ1〜10までの番号をつける。
1の番号のついたびんから1つ、 2の番号のついたびんから2つ、 3の番号のついたびんから3つ、・・・、 とそれぞれびんの番号の数の分だけ、 はかりの上にのせる。
はかりの上には計55個の錠剤があり、 重さは計5500mgでなければならない。
他と異なる錠剤は他のと比べて1つ10mg重いのだから、 もしここで、重さが50mg多ければ、 5個はかりの上にあることがわかる。
5個、はかりの上にのせたびんは5の番号のびんであるから、 答えは5のびんである。
というように、5500mgより何mg重いか、 というので、何番の番号をつけたびんかというのが、 1回のみはかりを使うだけでわかる。

(1)回答・その2

(ペンネ−ム:AKO)

  1. 10個のびんを A B C D E F G H I Jとする。
  2. Aから1粒  Bから2粒  Cから3粒  Dから4粒
    Eから5粒  Fから6粒   Gから7粒  Hから8粒 
      Iから9粒   取り出す。
  3. 取り出した錠剤の合計  
    1+2+3+4+5+6+7+8+9=45(錠)
      の合計の重さを量る。
  4. その結果次のように判定する。
    • 4500mgのとき間違っている薬びんは <J>
      理由・・100×(1+2+3+4+5+6+7+8+9)=4500mg
      より49粒の錠剤はすべて100mg/粒と考えられる。
      従って錠剤を取り出さなかった<J>の中に 110mg/粒の錠剤がはいっている。

    • 間違っている錠剤が1粒混入するごとに 45粒の合計の重さは
      110−100=10mg増えるので以下のように判定する。
              
      •    4510mgのとき <A>
      •    4520mgのとき <B>
      •    4530mgのよき <C>
      •    4540mgのとき <D>
      •    4550mgのとき <E>
      •    4560mgのとき <F>
      •    4570mgのとき <G>
      •    4580mgのとき <H>
      •    4590mgのとき <I>


(2)回答

(ペンネ−ム:コレクトコ−ルは106番!)

便宜上10個の薬びんを A B C D E F G H I Jとする。

まず、Aから1錠、Bから2錠、Cから2(=4)錠、
・・・Jから2(=512)錠とりだし、はかりにのせる。
合計1023錠となる。
もし、すべてが正しい錠剤であれば、
100mg×1023錠=102300mg(=102.3g)になるはずである。BR> しかし、実際には1023錠のうちのいくつかが110mgあるので、 はかりは102300mgより大きい値をとる。
そこで実際に量った値から102300mgを減じ、 それを10で割れば、10mg多い錠剤の数がわかる。
さて、10mg多い錠剤のびんを(1)で表し、 正規のびんを(0)で表すことにして、 J〜Aの順に書き並べていく。
例えば、CとJのびんが10mg多い場合は、下のように表せる。

       (1) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (1) (0) (0)
       J  I  H G  F  E  D  C  B  A
取り出した数 512 256 128 64  32 16 8 4 2 1 (錠)

見ておわかりの通り、( )内の数字は2進法である。 つまり、10mg多い錠剤の数を、2進法の表示にすればよい。 そのやり方は、問題7(1)解答 (ブラウザのバックボタンで戻ってきてね。)に記されていた 「6進法表示への変換方法」の、 6で割るところを2で割るように変えればよい。
その値を、上の表のように表せば、 不良品の薬びんは一目瞭然である。

1023錠をわからなくならないようにのせられるはかりが 存在するかどうかということに関しては、当方では一切関知できない。
もしわからなくなってしまうと、 例えば、AとBしか間違っていなかった場合、 正しい錠剤1020錠も捨てなければならない。 1びん分大損である。 この損失への補償を製薬会社に要求したところで、 一笑にふされるであろう。
さらに、1023錠を間違いなく数える手間を考えると、 1秒間に4錠数えたとしても、 単純計算で4分15秒75ほどかかる。 一般的な薬局にはこんなことをやっている暇はない。 従って、経済的、社会的側面から考えると、 多分、この問題には超合理的な別解がある、に違いない!!


正解者(ペンネ−ム)

板垣 央

Hungry Bear

AKO

フォルサ ジャポン!!

凡人

コレクトコ−ルは106番!

らびゅん

ちびっこ

みなみのしゅういち

渡邉宣子


まとめ

(1)私も「らびゅん」さんや他の解答してくださった方と同様に、
1+2+3+4+5+6+7+8+9+10=55
錠を量ると考えていたので、 「AKO」さんの解答を見た時は、 ガ−ンと頭を殴られた感じがしました。
数学の世界では、同じ答えにたどりつくにしても、 よりシンプルによりエレガントに解くことに 意義を見いだします。
そういう意味では「AKO」さんの解答は光っていますよね。

(2)Hungry Bear さんの解答は、
「1瓶1000個とは不自然に 数が多いように思います。数10粒から100粒 程度で良いように思いますが、そこが”ミソ”でしょう。 数100粒を取り出すのでは?...」
と始まっているのですが、さすがですね。 読まれてしまいました。
1びんの中に入れる錠剤の数は、 512を越えていなければならず、 え−い思い切ってと、1000個に設定したのです。 もちろん、(1)だけなら10個で充分ですしね。
2進法表示については、 その一意性(1通りの表し方しかない。)がポイントです。 だから、他の錠剤より10mg重い錠剤の入ったびんが1つとは 限らないとしても大丈夫というわけです。


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