Weekend Mathematicsコロキウム室テーマ別 /19.オイラーの「無限解析入門(1)」1



コロキウム室
(オイラーの「無限解析入門(1)」・その1)


NO.434    '99 4/5    水の流れ    オイラーの「無限解析入門(1)」
  

オイラー(1707年4月15日〜1783年9月17日)の数学と言うと 夜空に輝く北極星☆が思い浮かびます。 自然に流れるようなオイラーの数学は、その手書き文字にもよく表れているように、 明るく楽しい、とりわけ、250年前に出版されたオイラーの代表作「無限解析入門(1)」 (1748年刊)は、実に分かりやすく、表記法について曖昧さなど微塵もなく、 根本的な概念を示せるように工夫されています。
全体は18章からなり、大きく分けて、次の(イ)〜(ニ)に分類できます。
(イ)第1章〜第5章:多項式、有理関数、代数関数
(ロ)第6章、第7章:指数関数、対数関数
(ハ)第8章、第9章、第11章、第14章:三角関数
   第10章、第15章:ゼーター関数論 (この名前はオイラーの約100年後のリーマンが付けた関数)
(ニ)第12章:部分分数展開
   第13章:有理関数のべき級数展開
   第16章:分割数
   第17章:代数方程式の根の近似計算法
   第18章:連分数

「無限解析入門(1)」は、没後216年すぎて、全集が100巻に近付きつつあるが、 まだ出版が続いている現状です。 なお、「無限解析入門(2)」もあり、そこでは、一転して、 曲線や曲面の解析幾何学が扱われています。
先日、ゼーター関数ζ(2)物語で書きましたように、 オイラーは1735年(発表は1734年)に、ζ(2),ζ(4),・・・ を求めましたが、その後、研究は当然続いていました。 1749年に、ζ(0),ζ(−1),ζ(−2),・・・, ζ(s)とζ(1−s)の関係を発見しています。
さらに、1772年には、ζ(3)の表示を書いています。
「無限解析入門(1)」の第15章によると、



と表示してあります。 決して、ゼーター関数ζ(s)のsが奇数の場合についても、諦めていませんでした。
<誰かこの計算式の値を求めてください!!>
第10章では、次のような和も求めています。


<注:最初の式は1400年頃、南インドのマーダヴァが発見したものであり、 1670年代にヨーロッパにおいて、グレゴリーやライプニッツが再発見している。 オイラーの興味のきっかけを与えたものであったし、 最後の式はニートンが1676年に発見していました。>
ここで、あげた等式は約90年後の1837年にディリクレによって、 ”ディリクレのL関数”の特殊値として定式化さてれいます。
第10章の終わりでは、



が得られています。 皆さん! a→0のとき右辺が一体どんな値に近づくか考えてください。
本当に、驚きの連続です。オイラーは驚嘆すべき偉大な人間でした。 改めて、思い知りました。オイラーに再敬服します。

この原稿を書くにあたり、「数学のたのしみ4月号」:日本評論社 の中にある<数学書を探る:オイラーの数学>黒川信重著 を引用し、参考にしました。



NO.436    '99 4/9    Junko    オイラーの「無限解析入門(1)」(2)
  

NO.434で示された以下の式で、a→0としてみます。






NO.447    '99 4/21    水の流れ     オイラーの「無限解析入門(1)」(3)
  

オイラーの「無限解析入門(1)」第2夜の始まり、始まり。
先日、ゼーター関数ζ(2)物語で書きましたが、オイラーは1735年に、 ζ(2),ζ(4),・・・を求めました。
その後、研究は当然続いて、1749年に、ζ(0),ζ(−1),ζ(−2),・・・, ζ(s)とζ(1−s)の関係を発見しています。
もう一度この素晴らしい公式を書きます。


ゼーター関数ζ(s)の素晴らしいのはsにどんな複素数を代入しても、 意味を持つという点です。
<数学的には「解析接続可能」と言います>
オイラーの見つけた形(1749年)で言いますと、 s≦0のとき、月夜の世界 0≦s≦1のとき、たそがれとき<夕焼け・朝焼け> 1≦sのとき、昼間太陽の世界  とユニークな月のマークと太陽のマークを書いています。
特に、月夜の世界での計算が不思議な結果になります。 一例を挙げますと、
ζ(0)=1+1+1+・・・=−1/2
ζ(−1)=1+2+3+4+・・・=−1/12
ζ(−2)=1+4+9+16+・・・=0
ζ(−3)=1+8+27+64+・・・=1/120
これらは一体何を意味しているのでしょうか? もちろん普通にはこれらは無限大になっているはずです。 この計算は計算の達人であるオイラーが 250年前にやった計算です。
次回、この計算をオイラーになり代わって コロキウム室のco-workerさんとご一緒に行ってみましょう。

そこで、今夜の宿題です。


とおいて、ψ(s)とζ(s)の関係を発見してください。



NO.452    '99 4/28    Junko     オイラーの「無限解析入門(1)」(4)
  






NO.453    '99 4/29    水の流れ     オイラーの「無限解析入門(1)」(5)
  

皆さん!ゼーター関数物語の続編で、オイラーの『無限解析入門(1)』 の第3夜の始まり、始まり。
前夜の宿題も、上手に解けていますね。 これからも、この調子でよろしくね。
さて、ψ(s)とζ(s)の関係は ψ(s)=(1−2(1−s))ζ(s) より

ψ(0)=−ζ(0) 
ψ(−1)=−3ζ(−1) 
ψ(−2)=−7ζ(−2) 
ψ(−3)=−15ζ(−3)・・・・・・ となります。したがって、

1+1+1+・・・=ζ(0)=−ψ(0)
1+2+3+4+・・・=ζ(−1)=−1/3・ψ(−1)
1+4+9+16+・・・=ζ(−2)=−1/7・ψ(−2)
1+8+27+64+・・・=ζ(−3)=−1/15・ψ(−3) ・・・・・・が得られます。

そこで、今夜はψ(0),ψ(−1),ψ(−1),ψ(−3),・・・ を計算します。
その前に、次の等式を思いだしてください。
1+x+x+x+x+・・・=1/(1−x)・・・@
ちょっと、危ない計算ですが、ここで、x=−1を代入してください。
当然、収束条件にあっていません!
でも、ここのところを解析接続という手法で意味づけたのが オイラーの100年後のリーマンでした。
皆さん、このように考えてください。すると、

ψ(0)=1−1+1−1+・・・=1/2と求まり、
ζ(0)=1+1+1+1+・・・=−1/2がでてきます。

ここで、今夜の宿題です。
等式@の両辺を2乗して、ψ(−1)から、 ζ(−1)=1+2+3+4+・・・を求めてください。
また、時間的に余力のある人は、 ψ(−2)、ψ(−3)にもチャレンジしても良いですよ。
読者の皆さんに、もう一度言っておきます。
ここでの計算はオイラーが発見したζ(s)とζ(1−s)の「双対性」 の理解を目的にしていることを!
それでは、第3夜の幕を下ろします。 また、明日の夜お会いしましょう。



NO.461    '99 5/5    月の光    オイラーの「無限解析入門(1)」(6)
  






NO.469 '99 5/10水の流れオイラーの「無限解析入門(1)」(7)

オイラーの「無限解析入門(1)」の第4夜の始まり、始まり。
先日、「月の光」さんによって、第3夜の宿題が見事に、 微分を利用して、一気に解決されました。(NO.461)
「月の光」さん!すごい。
次の等式を書きましたね。


そして、x=ー1を代入すれば、 ψ(−2)、ψ(−3)を求められて、 ζ(−2),ζ(−3) を計算できます。
皆さん、チャレンジしてくださいね。
今夜はこれで終わります。また、次夜をお楽しみに待っててください。



NO.471 '99 5/13Junkoオイラーの「無限解析入門(1)」(8)







NO.477 '99 5/17水の流れオイラーの「無限解析入門(1)」(9)

オイラーの「無限解析入門(1)」の第5夜の始まり、始まり。
次の等式が基本でしたね。


これらの値はゼーターの特殊値としての解釈ができますし、 自然界にも普通に表れているかもしれません。
たとえば、ラモローさんは1997年に、量子力学において50年間 念願とされてきたカシミール効果をアメリカのシアトルにおける実験で 確認したときの理論値は実質的に
1+8+27+64+・・・=1/120  でした。
無限大になるところをうまく引き去って(繰り込んで) 意味のある有限値を出すことを物理学での言葉で「繰り込み」と言いますが、 上記の値がその一例と考えられます。
オイラーの奇妙な計算が出たついでに、オイラーの最も激しい計算 (発散がゼーターの場合より激しい!)を紹介します。

1!−2!+3!−4!+5!−6!+7!−・・・=0.4036526・・・

<今までのオイラーの「無限解析入門(1)」の原稿は、 「数学の夢 素数からのひろがり 」黒川信重:岩波書店 を参考にして、 多くの引用しています。>

第2夜のときに、以下のことを書きましたね。
ゼーター関数ζ(s)の素晴らしいのはsにどんな複素数を代入しても、 意味を持つという点です。<数学的には「解析接続可能」と言います> オイラーの見つけた形(1749年)で言いますと、

s≦0のとき、月夜の世界
0≦s≦1のとき、たそがれとき<夕焼け・朝焼け>
1≦sのとき、昼間太陽の世界

とユニークな月のマークと太陽のマークを書いています。
月夜の世界での不思議な計算はここで、終わりにしまして、 昼間の計算に移ります。 オイラーは1735年に、順次ζ(2m)(m=1,2,・・・13)を計算しました。 ζ(26)が最後でした。ちなみに、

ζ(26)=1315862/11094481976030578125・π26です。
実に驚異的な計算能力です。驚嘆するばかりです。

ここで私ことですが、3月,数式処理「Mathematica」の講習会 を受講してきました。 昼休みにこっそりソフトをお借りしまして、 我のオイラーに近づこうと思いまして、ゼーターζ(s)の値に挑戦しました。


Mathematicaは偉大なソフトです。瞬時に計算してくれます。
私の手元に、ζ(2m)(m=1,2,・・・22) の値があります。
ζ(3)の値は出ませんでしたが、オイラーに少しでも近づけたような感動が湧いて来ました。
話を本題に戻ります。 あのベルヌイが研究したベルヌイ数に挑戦していきます。

さて、問題です。


このBの値をBからBまで、求めてください。 これで、第5夜を閉じます。お休みなさい。



NO.485 '99 5/21Junkoオイラーの「無限解析入門(1)」(10)






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