Weekend Mathematics問題/問題84



84.和の偶奇性

最初に2つの異なる整数を任意に選び、それをa,b(a<b)とします。
aからbまでの範囲(a,b両者を含む)から任意に異なる数を選んで、それを加え合わせます。
さて、得られた合計数の偶奇(偶数か奇数か)、あなたはどちらにかけます?









問題の出典


エインリの数学パズル
S.エインリ著
高木茂男訳
培風館




答えと解説





答えと解説

解答・その1

(ペンネ−ム:kiyo)

奇数です。



解答・その2

(ペンネ−ム:杖のおじさん)

答え       奇数に賭けます。

問題からどちらかが有利になる根拠があるのではと思いましたが、わかりません、 そこで、ポケコンに考えさせました。

今回もCASIO(カシオ) FX―870P  CASIO(カシオ) FX―890P のポケットコ ンピューター(ポケコン)でプログラムを作ってみました。

プログラムは次の通りです。

10 DIM K(2),X(2):PRINT“キグウ”
20 INPUT“1カラ イクツマデ”;A
30 INPUT“シサン ハ ナンカイ”;B
40 W=0:Y=0
50 FOR H=1 TO B
60 FOR C=1 TO 2
70 K(C)=INT(RAN#*A+1)
80 IF K(C−1)=K(C) THEN 70
90 NEXT C
100 IF K(1)>K(2)THEN Z=K(1):K(1)=K(2)
    :K(2)=Z
110 PRINT K(1);K(2);;
120 Z=K(2)
130 FOR C=1TO2
140 X(C)=INT(RAN#*Z+1)
150 IF X(C)<K(1) THEN 130
160 IF X(C−1)=X(1) THEN 130
170 NEXT C
180 PRINT X(1);X(2)
190 V=K(1)+K(2)+X(1)+X(2)
200 P=V/2:XX=P−INT P
210 IF XX>0 THEN PRINT“キスウ”;H:Y=Y+1
    :GOTO 230 
220 PRINT“グウスウ”;H:W=W+1
230 NEXT H
240 BEEP:PRINT“グウスウ”;W;“キスウ”;Y
250 IF W=0 THEN PRINT“ゼンブ キスウ”:GOTO30
260 IF Y=0 THEN PRINT“ゼンブ グウスウ”
270 GOTO 30


プログラム解説
40行と220行間のFOR〜NEXT文で実験回数だけループする。
50行と80行間のFOR〜NEXT文で最初の異なった2つの数字を選ぶ
120行と160行間のFOR〜NEXT文で最初に選んだ2つの数字の間の異なった2つの数字を選ぶ
190行で2で割って余りのあるものを奇数、割り切れたものを偶数と判断します。
60行、130行で異なる数字をRAN#(乱数)により選びます。
90行で異なった数字を昇順に並べ換えます。
200行のY=Y+1で奇数、210行のW=W+1で偶数になった回数を数えます。
200行、210行のHで何回目の結果か表示しています。
230行でBEEPで音を鳴らし結果を表示いたします
Wは偶数が出た個数の変数、Yは奇数が出た個数の変数です。

プログラムを実行すると 1カラ イクツマデ と聞いてきますので 1000を入力します。 
次に シサン ハ ナンカイウシマスカ と聞いてきますので10000を入力します。
そして EXE  実行キー を押すと

    257   568   526   365   グウスウ1
    126   388   257   324   キスウ2
    ・・・   ・・・   ・・・   ・・・   ・・・3

と10000回表示され偶数と奇数の数を表示いたします。
約 3時間で結果が出ます。それまでゆっくり待ってます。

各回、10000回試算したときの偶数、奇数の数は次の通りです

  一回目      偶数  4969  奇数  5031 となりました。
  二回目      偶数  4976  奇数  5024 となりました。
  三回目      偶数  5013  奇数  4987 となりました。
  合 計      偶数 14958  奇数 15042 となりました。

エクセルだと 瞬時に結果が出ます。
数学/三角 関数 の RAND、 RANDBETWEEN、MOD、 論理関数の IF、 統計関数の COUNT、COUNTA、COUNTIF、 COUNTBRANK、 等を工夫して使い実験をやって見たいと思います。




解答・その3

(ペンネ−ム:柿本 浩)

んん〜?
整数を適当に1つ選んだ時、それが偶数/奇数の確率はもちろん1/2だろ?

適当に2つ選んで足し合わせた時の合計値の偶奇は

1個目:2個目合計値
偶数:偶数偶数
偶数:奇数奇数
奇数:偶数奇数
奇数:奇数偶数

で決まり、どのケースも確率は同じなので合計値の偶数/奇数の確率もやっぱり1/2

後はいくつ足していこうと同じ事で
「最後に選んだ数の偶奇がそれまでの合計値の偶奇と一致するかどうか」
で決まるため、結局のところ何個合計しようと確率は1/2じゃないの?

いやまてよ、それじゃ問題にならんよなぁ...

あれ?そう言えば「適当に選んだ整数が偶数/奇数である確率が1/2」ってのは 「無限に存在する(と見なせる)すべての整数の中から 全く無作為に1つの数値を選ぶ場合」だからこそ言える事だよな?

問題文の手順がそれと異なる点は...


って事か、これが確率にどう影響するかと考えると...
まずはお約束の極端なケース。
aとbが隣り合う数値(b = a + 1)だった場合は、足し合わせる数も2つ(aとb)しか存在せず 合計値は必ず奇数になる。 逆に「aとbが決まっただけで合計値は必ず偶数になる」なんてケースは有りえない。

    → 奇数軍やや優勢か

次はaとbの値によって決まる母集団の性質について。
まずaとbも異なる数値を選ぶ必要があるため、完全な無作為抽出ではないけれど この時点での母集団は無限に近いほど存在する「すべての整数」だから 1つの数値が欠けた程度で偶数と奇数の個数に有意な差が生じるとは言い難く a, bが偶数/奇数である確率はいずれも1/2と見なしていいんだろうな。

つまり

a, bが共に偶数であった場合母集団に含まれる偶数の個数は奇数の個数より1つ多い
a, bが共に奇数であった場合母集団に含まれる奇数の個数は偶数の個数より1つ多い
aが偶数でbが奇数の場合母集団に含まれる偶数の個数と奇数の個数は等しい
aが奇数でbが偶数の場合母集団に含まれる偶数の個数と奇数の個数は等しい

この4つのパターンがあって、それぞれのパターンになる確率は等しい(1/4)と見なせる、と。

     → 全パターン確率が一緒なら、これはあんまり影響はないかな?

そして「同じ数値は選べない=1度選んだ数値は母集団から排除される」事の影響は、 とりあえず最も基本的なケースだと思われる
「偶数・奇数が同じ個数だけ含まれた母集団から、2つの数を取り出して合計する」 場合で考えてみると...

1個目の数値を選ぶ時、偶数/奇数である確率はそれぞれ1/2(まぁ、同じ個数だから当然やね)
          ↓
2個目の数値を選ぶ時点では
 1個目が偶数だった場合 → 偶数が奇数よりも1個少ない → 奇数を選ぶ確率が上がる
 1個目が奇数だった場合 → 奇数が偶数よりも1個少ない → 偶数を選ぶ確率が上がる

2個目は1個目と偶奇が異なる数値を選ぶ確立が1/2よりもわずかに上がると見なせる つまり、1個目と2個目の合計値が偶数になる確率よりも奇数になる確率の方が高いと言える。

     → やっぱり奇数軍やや優勢か

他にも色々考えてみたけれど
「合計値が奇数になる確率の方が明らかに高い」ケースはいくつか見当たれど
「合計値が偶数になる確率の方が明らかに高い」ケースは考えつきませんでした。

という事で解答は

「ほとんど五分五分なのは間違いないんだけど 奇数に賭けた方がほんのちょっとだけお得じゃないかな?」

といった所です。




解答・その4

(ペンネ−ム:夜ふかしのつらいおじさん)

おじさんは、奇数にかけます。

この問題を考えるのに、aとbを正の整数(自然数)としても一般性を失わない ので、a>0 とします。初めにaを選ぶとき、自然数の中に奇数も偶数も無数にあ るので、どちらを選ぶ確率も同程度に確からしいとします。次にbを選ぶとき も、aより大きな自然数の中に奇数も偶数も無数にあるので、どちらを選ぶ確率 も同程度に確からしいとします。

また、次の知識を使います。


さて、aとbを選ぶとき、次の8つの場合があります。
aからbまでの自然数の奇数と偶数の個数に注目して次の8つの場合を考慮すると すべてのパターンを網羅できます。( )の中は、(奇数の個数,偶数の個数) です。

T aが奇数から始まりbが1ずつ増えて、 @(2n-1,2n-1) A(2n,2n-1) B(2n,2n) C(2n+1,2n)

U aが偶数から始まりbが1ずつ増えて  D(2n-1,2n-1) E(2n-1,2n) F(2n,2n) G(2n,2n+1)

以下、奇数の場合の確率考えます。

@の場合、合計(4n-2)個の数1つ1つの数については、選ぶ選ばないの2通りが あります。
aからbまで、(4n-2)個の数の選び方は 24n-2−(4n-2+1) =24n-2−4n+1個となります。 なぜなら、問題で、「・・・aからbまでの範囲(a,b両者を含む)から任意に異な る数を選んで・・・」 といっているので最低限2つの数を選ぶと解釈して、1つだけ選ぶ(4n-2)通り、 1つも選ばない1通りを引いておきます。
合計が奇数になる選び方は、奇数の個数が奇数で偶数の個数はどうでもよいの で、

  (2n-1C12n-1C3+・・・+2n-1C_2n-1)・ (2n-1C02n-1C1+・・・+2n-1C2n-1)−(2n-1)

となります。なぜなら、奇数が1個で偶数が0個の、(2n-1)通りを引いておきます。 これは、上の知識を使うと、

  (2n-1C12n-1C3+・・・+2n-1C2n-1)・ (2n-1C02n-1C_1+・・・+2n-1C2n-1)−(2n-1)
 =1/2・22n-1・22n-1−(2n-1)
 =24n-3−(2n-1)
 =24n-3−2n+1

だから、この場合、奇数である確率は、

  {24n-3−(2n−1)}/{24n-2−4n+1)}
 ={24n-3−2n+1}/[2・{24n-3−2n+1}−1]・・・ 1/2より大

以下同様に、計算すると、それぞれ

A{24n-2−2n}/{24n-1−4n}=1/2

B{24n-1−2n}/{24n−4n−1} ={24n-1−2n}/[2・{24n-1−2n}−1]・・・ 1/2より大

C{24n−(2n+1)}/{24n+1−(4n+2)}=1/2

D{24n-3−2n+1}/[2・{24n-3−2n+1}−1]・・・ 1/2より大

E{24n-2−(2n-1)}/{24n-1−4n} ={24n-2−2n+1}/[2・{24n-1−2n+1}−2]・・・1/2より大

F24n-1−2n}/{24n−4n−1} ={24n-1−2n}/[2・{24n-1−2n}−1 ]・・・ 1/2より大

G{24n−2n}/{24n+1−(4n+2)} ={24n−2n}/[2・{24n−2n}−2]・・・1/2より大

まとめると、奇数の確率は

  @1/2より大 A1/2    B1/2より大 C1/2
  D1/2より大 E1/2より大 F1/2より大 G1/2より大

これらの8つの場合はそれぞれ同程度に起こると考えられるので、奇数にかける 方が得だと考えられます。



解答・その5

(ペンネ−ム:小学名探偵)

(1)元の整数の集まりが同数(n個)の奇数と偶数でできている場合 (本問でいえば、aとbのパリティーが異なるとき)はどうでしょうか。

  偶数+偶数=偶数:n×(n−1)通り
  奇数+奇数=偶数:n×(n−1)通り
  偶数+奇数=奇数:n×n通り。一回目に偶数を選び、二回目に奇数を選びました。
  奇数+偶数=奇数:n×n通り。一回目に奇数を選び、二回目に偶数を選びました。

の関係から、合計が奇数になる確率の方が高いです。

(2)個数が1違いの奇数と偶数で元の整数の集まりができている場合 (本問でいえば、aとbのパリティーが同じとき)はどうでしょうか。

上の(1)の分析から、偶数の個数(n+1/n個)が奇数の個数より1つだけ多ければ/少なければ、

  合計が偶数の場合の数=(n+1)×n+n×(n−1)=2×n×n
  合計が奇数の場合の数=2×(n+1)×n

から、合計が奇数になる確率の方が高いです。





解答・その6

(ペンネ−ム:Toru)

b-a=nとした時、aからbまでの範囲(a,bを含む)から任意に2つの数を選んで加えあ わせ、奇数になる確率をP(n)とします。和が奇数になるためには偶数と奇数を一つず つ選ぶことになるから、

   n=2m-1の時、偶数奇数ともにm個で、P(2m-1)=m2/2mC2=m/(2m-1),

   n=2mの時 、どちらかがm個と他がm+1個、P(2m)=m(m+1)/2m+1C2=(m+1)/(2m+1)

因みにこれを並べて書いてみると

   1,2/3,2/3,3/5,3/5,4/7,4/7,5/9,5/9,--------

m→∞の時、P(2m-1)→1/2, P(2m)→1/2,より、lim(n→∞)P(n)=1/2が分かります。

便宜上b-a≦nとした時、まずaを任意に決め前期不等式を満たす範囲で、bを任意に 決めるとすればb=a+1,a+2,--------,a+nのいずれかでそれぞれの確率は1/nと考えら れるので、この時の和が奇数になる確率、

  Q(n)=(P(1)+P(2)+-----+P(n))/n、n→∞とすると、P(n)→1/2よりQ(n)→1/2----*)

だからやっぱりこの確率は1/2となるように 思われます。要するにnが無限にある大きな数字の方では確率はほとんど1/2になって しまうので、小さな方の特殊な場合は、無視できるということかと思います。ただ現 実に賭けをする時ははとっても大きな数字を選ぶことは確率が少なそうで、奇数を選 んでおいた方が無難かも知れません。

補足)*)の証明

P(n)-1/2=R(n)とするとR(n)→0, Q(n)=(R(1)+R(2)+------+R(n))/n+1/2だから
R(n)→0の時、(R(1)+R(2)+------+R(n))/n→0を示せばよい。
任意のε(>0)に対し、一つの番号kを決めて|R(j)|<ε/2 (j>k) ,
またさらに充分、大きなnを決めて、

   |(R(1)+R(2)+------+R(k))/n|<ε/2とできる。

   |(R(1)+R(2)+------+R(n))/n|<|(R(1)+R(2)+------+R(k))/n|+(n-k) (ε/2)/n<ε/2+ε/2=ε





解答・その7

(ペンネ−ム:三角定規)

(1) a,bがともに奇数のとき
 a=2m−1,b=2n−1 (m,nは整数でm<n ),k=n−m(>0)と書くと
 この間(両端を含む)にある奇数は k+1個
       〃         偶数は  k  個

 <1A> ここから選んだ2数の和が奇数となるのは奇偶と選んだときで,その確率は

   

 <1B> 2数の和が偶数となるのは奇奇・偶偶と選んだときで,その確率は

   

(2) a,bがともに偶数 a=2m,b=2n (m,nは整数でm<n,k=n−m)のときも (1)とまったく同様で,

 <2A> 数の和が奇数である確率は

   

 <2B>     偶数である確率は

   

(3) a,bの奇偶が異なるとき
  a=2m−1,b=2n および a=2m,b=2n−1  (m,nは整数でm<n,k=n−m)どちらの場合にも,a,bの間(両端を含む) には奇数・偶数がともに k+1個ある。

 <3A> 2数の和が奇数である確率は

   

 <3B> 偶数である確率は

   

以上(1)(2)(3)いずれの場合にも2数の和が奇数になる確率がわずかに大きい。
よって,奇数に賭けるのがよい。 …[答]



解答・その8

(ペンネ−ム:Mr.X)

最初に2つの異なる整数を任意に選び、それをa,b(a<b)とします。aからbまでの範 囲(a,b両者を含む)から任意に異なる数を選んで、それを加え合わせます。

和が奇数になる確率は、

b−a=2n の場合

   

b−a=2n+1 の場合も

   

したがって、和が奇数になる確率は、

   

奇数になる確率が偶数になる確率より

   

だけ大きいですね。



解答・その9

(ペンネ−ム:teki)

答え 奇数に賭けます。

  和が偶数となるのは、偶数+偶数、奇数+奇数の場合
  和が奇数となるのは、奇数+偶数、偶数+奇数の場合

任意の2つの数の偶奇性は、それぞれ1/2です。
これだけ考えると、どちらに賭けても同じように見えますが、実は罠があります。
例えば、b=a+1 のような場合、選ぶ2つの数は自動的に偶数と奇数 の組合せとなり、和は奇数になってしまいます。 また、b=a+2 のような場合も、和が偶数となる確率は、奇数となる確 率の1/2になります。 aとbの差が大きくなれば、この確率は1/2に限りなく近づくんですが、い ずれにせよ、有限の範囲では、奇数となる確率の方が高くなります。

では、なぜ、こういった不公平が起こるのでしょうか? それは、「重複して選択する」ことを許していないからです。
解りやすく例えれば、2つのサイコロを振って丁半博打 (小学生の皆さん、やっちゃだめですよ!)をやった時に 追加ルールとして、「ゾロ目が出たら振りなおす」という ルールを付け加えるのと同じです。
普通のルールの場合、丁半の確率は各々1/2ですが、 新ルールではゾロ目=丁(偶数)を除いてしまっている ため、どうしても半(奇数)の出る確率が高くなってしまう のです。
今月の問題でも、「異なる」という条件を「重複を許し て」にすれば、奇数と偶数の確率は1/2ずつになります。



正解者

teki 夜ふかしのつらいおじさん Toru
杖のおじさん 小学名探偵 柿本 浩
Mr.X 三角定規 kiyo





まとめ

偶数と奇数は、半々ずつだから、同じような確率ででると思いますよね?
ところがそうではないのです???   奇数の方が有利なのです。
不思議ですねえ・・・。
最初に2つの整数を選び、それらを含んだ範囲の中から異なる2数を選ぶ、という 2段階を経ているところがミソです。
この2数(a,b)の差が小さければ小さいほど、奇数が有利であり、 差が無限大に大きいと偶奇の確率は1/2ずつになります。
(つまりa,bを設定する意味がないということですね。)
柿本 浩さんが、まず極端な事例で検証していらっしゃいますね。 アプローチの方法としては、定石だと思います。(私もそうしました。) 検証しやすい手頃なところから確かめていくと、 偶奇が平等でないことも見えてきますし、 どのように場合分けしていけばいいかも見えてきますね。







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