Weekend Mathematics問題/問題4

4.作図の問題

縦、横、斜め、どの方向でも秒速1cmで動けるペンを 備えた作図装置がある。 ペンが紙についていれば動きに従って線が描かれ、 ペンが紙から離れていれば何も描かれない。 この装置で下の図形を描くのに最短で何秒かかるか。 ただし、図に現れる角はすべて直角とし、 ペンを紙につけたり離したりする動作には 時間はかからないものとする。



問題の出典


第5回日本数学オリンピック予選(1995)問題

「数学オリンピック1991〜1996」

日本評論社


答えと解説












答えと解説

4.縦、横、斜め、どの方向でも秒速1cmで動けるペンを 備えた作図装置がある。 ペンが紙についていれば動きに従って線が描かれ、 ペンが紙から離れていれば何も描かれない。 この装置で下の図形を描くのに最短で何秒かかるか。 ただし、図に現れる角はすべて直角とし、 ペンを紙につけたり離したりする動作には 時間はかからないものとする。





回答・その1

(ペンネ−ム:碧都柊一)

1cm/1secとして、点線の部分は実際にはかかないところ、 SQR(2)。従って全体では12+SQR(2)秒。



回答・その2

(ペンネ−ム:コレクトコ−ルは106番!)

この作図装置において最も描くのに適している図形は 「一筆書きのできる図形」である。 なぜならば、「描いていない時間」つまり「ムダな時間」が 0になるからである。

さて、問題の図の点をA、B、C、D、E、F、G、H、Iとおく。

一筆書きの可能な図形の条件

@各々の点から伸びている線の本数がすべて偶数である。

A伸びている線の本数が奇数になっている点が2ヶ所だけ。

@Aのいすれかが成り立てばよい

残念ながら、問題の図形は上に掲げた条件に合致しないので、 一筆書きはできない。

そこで、図形にできるだけ短い線を書き加え、 一筆書きのできる図形を作図するのが、最も合理的である。 (書き加えた線の部分はペンを紙から離しておけばよい。)

この図形には、線が3本延びている点が4ヶ所(点B、D、F、H) あるので、うち2ヶ所を直線で結べば、上の条件のAに合致するので、 一筆書きが可能になる。 そこで、とりあえずBFを結び、 (別に、BDでもDHでもFHでもよい。)これを点線で表記する。

BFの長さは、BC=CF=1cmであり、 ∠C=∠R(90゚)なので、 三平方の定理よりSQR(2)cmになる。 また、実線部分の総延長は、考えてみればわかるが12cmになる。

さて、作図装置のペン先を点Hがくる位置におく。 そして、下に示すようにたどる。 (下図にル−トを模式的に示す。この他にも距離の同じになるル−トはある。)

H→G→D→E→H→I→F→B→C→F→E→B→A→D

これが最短ル−トである。前述よりこのル−トの長さは、12+SQR(2) cm

作図装置は1cm/秒だから、12+SQR(2)秒

回答・その2・コメント

完璧なレポ−トだね! 12+SQR(2)秒が最短だという理由もきちんと示されている。

正解者(ペンネ−ム)

BRAINMANIA

KOU

FLASH!

凡人。

ミネラル Water

石川ごえもん

Ah!My Goddess

はなフムフム

ぜにがたのとっつあん

ベジタリアンな肉食獣

BABY MINNIE

サンジェルマン

まとめ

一筆書きの問題だということがわかったかな?  もし、ペンを最初から最後まで離さずに描ければ(一筆書きできれば) 一番無駄がないわけで、 そうすると12秒です。

しかし、この図形は一筆書きできませんから、12+α。 このαをいかに小さくするかが問題です。

ところで、一筆書きといえば、「ケ−ニヒスベルグの7つの橋問題」。

ケ−ニヒスベルグの7つの橋問題

今から2世紀以上も昔、ドイツがまだプロシャと呼ばれていた時代、 ケ−ニヒスベルグの町の話である。 この町を流れるプレ−ゲル川に2つの島とそれらを結ぶ7つの橋があった。 この7つの橋のどの橋もちょうど1回ずつ渡るような散歩のコ−スは ないだろうか? というのが人々の話題となっていた。

この問題を解決したのが、スイス生まれの偉大な数学者オイラ−(1707-1783)です。 オイラ−はこう考えたのです。 まず陸と島を点で表し、橋はそれらを結ぶ線とする。 これが下の図です。この図が一筆書きできるかどうかによる、と。

そこで、どんな図形が一筆書きができて、どんな図形ができないかを研究して得たのが 「一筆書きの定理」です。

すなわち、各点から出ていく(or入ってくる)辺が偶数のときこの点を偶点、 奇数ならば奇点と呼ぶ。そして、図形全体に奇点がいくつあるか数えます。 (奇点の個数が奇数ということはありえない。 なぜなら、1つの辺は必ず両端で1回ずつ、つまり2回カウントされるからです。)

@奇点がないならばこの図形はどこから書き始めても一筆書きできる。

A奇点が2つある図形は、どちらか一方の奇点から書き始めれば、 もう一方の奇点で書き終わり、一筆書きできる。

B奇点が4つ以上ある図形はどうやっても一筆書きできない。 ケ−ニヒスベルグのグラフは4点すべてが奇点ですから不可能というわけです。

@Aのケ−スについて更に付け加えるならば、どうやっても必ず一筆書きできるというわけではなく、 うまいル−トをたどればできる、ということです。誤解のなきよう。

さて問題に戻りますが、与えられた図形は奇点が4つあり、従ってα≠0。 (一筆書きできないからネ) そこで、2つの奇点を結ぶ線分を付け加えて、この2点を偶点に変えてしまえばいいのだ! (ペンネ−ム:コレクトコ−ルは106番!)さんの回答通りですね。



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