Weekend Mathematics/問題/問題18
18.「鏡の国のアリス」の問題
ゆめのなかに、金、銀、銅でできた3つの美しい箱が
あらわれました。
それには、下のように書かれていました。
鏡の国のアリスの算数パズル
山崎直美著・訳
さ・え・ら書房
(ペンネ−ム:Hungry Bear)
せっかくですが鏡の国の女王になるのは辞退させてもらいます...?
(ペンネ−ム:ピカ坊)
一つの箱がうそなのだから
(ペンネ−ム:Idaho Potato)
まず、「各々の箱の中身を推定する」という考え方でいくと、 王冠と女王冠の配置の方法は、3×2 = 6 通りしかないので、 次の表のように、網羅的に調べてしまえば、解が見つかります。
箱の中身 文言の真偽 金 銀 銅 金 銀 銅 (1) 王 女 空 ○ ○ ○ (2) 王 空 女 ○ × ○ ← 条件に合致、しかも一意! (3) 女 王 空 ○ × × (4) 女 空 王 ○ × × (5) 空 王 女 × × × (6) 空 女 王 × ○ ×…というわけで、解は「女王冠は銅の箱の中」です。
私は最初にこうやって解を見つけてしまったのですが、 いくらなんでも、これでは答にならないでしょうから、 上の表を見ながら、「後付け」で理屈を考えていきました。 …といっても、初めのうちは、いろいろ理屈をつけたところで、 結局、本質的には「単に検索の順番を変えているだけ」 という気がしていました。
…ところが、ある時、 「この表、なんとなく、命題論理の『真理値表』に似てるなぁ…」 ということに気づき、次の瞬間、ひらめきました!
「箱の中身」でなく、「文言の真偽」に着目すれば、 3通りの可能性を調べるだけでよいのです!! すなわち、
文言の真偽 金 銀 銅 (a) × ○ ○ (b) ○ × ○ (c) ○ ○ ×の3通りについて、consistency(無矛盾性)を調べればよいわけです。
ここで、これらの組合せの consistency を確かめるために、 いちいち王冠や女王冠をあてはめて考えていたのでは、 結局、最初の6通りの可能性を検索するのと同じになってしまいます。 そこで登場するのが「命題論理」、というわけです。
金、銀、銅の箱に書かれている文言が真である、という命題を、
それぞれ [金] [銀] [銅] で表します。すると、明らかに、
命題A: [銅] ならば [金]
が成り立ちます。また、この逆が成り立たない場合を考えると、
それは、「金の箱に女王冠が入っている」ということになりますから、
命題B: ([金] かつ ([銅] でない)) ならば ([銀] でない)
が成り立ちます。
これらの事実を踏まえて、(a)(b)(c) の consistency を調べると、
(a)は、命題Aに反するので矛盾、
(c)は、命題Bに反するので矛盾、
となり、残る可能性は(b)だけになります。
そして、(b)の真偽の組合せに従って王冠と女王冠を配置してみると、
必然的に最初の表の(2)の配置になり、その状態で(b)の組合せが
実現されているので、(b)はconsistent(無矛盾)となるわけです。
Hungry Bear
ぷー
What・to・do?
T_Tatekawa
UNO
板垣央
Idaho Potato
デューク・かげやま
国語教師
大学院生の暇つぶし
akihiro
紫電
ピカ坊
大王
Suppon7
今回はたくさんの方から解答をいただき、うれしく思っています。
どうもありがとうございます。
その多くは、「Hungry Bear」のように、どれか1つの箱だけがウソ、 というところに着目して、3つに場合わけしています。 そして王冠と女王冠がどこにあるかを、考えて矛盾を引き出しています。
「ピカ坊」さんは、やはり同じように場合分けしていますが、 ウソが書いてある箱はただ1つだけというところで、 矛盾を引き出していますね。 そこが微妙に違うところです。
いずれにしても、もれなく、重複なく、きちんと場合分けをして、 検証することが大切です。
「Idaho Potato」さんがとてもすっきりとまとめてくださっていますので、
もう私の言うことは何もありませんね。