Weekend Mathematics/コロキウム室/NO.118
NO.996 | 2001.8.1. | 水の流れ | 正七角形(1) |
皆さんは、円に内接する四角形ABCDについて、「トレーミの定理」があることをご存じですか。
2組の対辺の長さの積の和が2つの対角線の長さの積に等しいというものです。
AB・CD+BC・AD=AC・BD
さて、問題の正七角形で考えてみます。もちろん、円に内接しています。
ここで、この円に内接する四角形BCDGを考えます。
BG=BD=DF=x 、 CG=DG=y 、 AB=BC=CD=10から、
「トレーミの定理」 BC・DG+CD・BG=BD・CG に代入して
10・y+10・x=x・y この両辺を10xyで割ると、
1/x+1/y=1/10 になります。
<コメント:この解法は、「初等数学:2001年8月明日葉号」の記事の中に、
岩田至康先生の「幾何学大辞典;第4巻130項」に書いてあると、紹介してありました。
上の記事を読んだことを付け加えておきます。
なお、問題提起の同時性には大変驚いていますけど。>
NO.997 | 2001.8.1. | yokodon | 塩基の切断(2) |
本問ですが、とりあえず4種の文字の成す円順列において、特定の文字列を構成す
る場合の数の組を考えるという方針で考えてみます。が、それを全て求めるとなると
、その全体からなる集合は、要素数がかなり大きいでしょう。
酵素A、B、C、Dにより切断される箇所の数を、それぞれ a、b、c、d とします。
4種の塩基の総数が 5243 で、その組成がG、C:約 20% 、A、T:約 30% とな
っています(実は、計算してみれば容易に分かるとおり、こうみなさないと成分塩基
の個数が整数にならない)。
ここでは、各々の塩基の数を、G:1048、C:1049、A:1573、T:1573 としてみましょう。
全ての塩基(実は、正確にはヌクレオチド残基と言うべきなのですが;後述)は環
状に並んでいるので、塩基同士の結合が 5243 ヶ所有ることになります。
酵素A、B、C、Dの認識部位に存在する塩基の個数を考慮して、各酵素の認識部
位が重複しないという仮定を更に設けると、4種類の塩基について以下の不等式が成
り立ちます。
塩基A:a+3b+c≦1573
塩基G:a+2c+4d≦1048
塩基T:a+3b+c≦1573
塩基C:a+2c+4d≦1049
ところが、これを満たす場合の数の組の全体がつくる集合は、
かなり“大きい(R4 上のある超直方体に属する格子点のうちのかなりの部分を
占めるという意味で)”でしょう。
集合の外延的記法で書くとなると、すごいことになりそうです。
しかも、「各酵素の認識部位が重複しない」という仮定によって、例えば“AGC
TTTAAA”といった配列を考慮の対象から除外しているので、それを更に考慮に
入れるとなると、本問で掲げられた条件下では、更に状況が複雑になってしまいます。
塩基配列に関する情報が一切無い中で、各酵素による切断箇所の個数を評価すると
いうのも、問題を解答困難にしているように感じられます。
あるいは、何か上手い評価方法があるのかも知れませんが、僕はこれ以上は思いつ
きませんでした。
以下、問題の背景と思われるものをいくつか補足的にコメントしたいと思います。
ここで言う4種類の塩基とは、DNA(デオキシリボ核酸)を構成するヌクレオチド
の塩基部分のことですね。
それぞれ、A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン、です。
環状の DNA は、一般には細菌類に多く見られるもので、プラスミドと呼ばれます。
ただ、既知のプラスミド DNA の多くは2重鎖になっており、本問で想定した1重
鎖にするには、ある別の処理が必要です。天然で1重鎖のプラスミド DNA というの
は、僕が知りうる限り、多分存在しないと思います。
DNA を構成する4種類のヌクレオチドの構成比が、AとG、CとTでほぼ等しくな
っているのは、(DNA の2重らせんの図をご存じの方なら理解しやすいと思いますが
)この各々の組で相補的に分子間水素結合を形成することで、DNA の高次構造が形成
されているからです(局所的に2重らせんでない構造をとっていることもあるので、
必ずしも厳密に等しいわけではないのですが)。
本問で想定されていた4種類の酵素は、『制限酵素』と呼ばれるもので、DNA 上の
特定のヌクレオチド配列を認識してその部位の加水分解反応を触媒します。DNA は4
種のヌクレオチド(塩基+糖(デオキシリボース)+リン酸)の異種多量体であり、
糖の水酸基とリン酸とでつくられる「リン酸ジエステル結合」を介して多量化してい
ます。その結合を加水分解で切るというわけです。
制限酵素のバイオテクノロジーへの応用例はいくつか有りますが、例えば以下のよ
うな例があります。
大腸菌を使って、あるペプチド(例えばインシュリン)を増やそうとする場合、制
限酵素を使った DNA の切り張りはよく使われます。制限酵素を用いて、特定のプラ
スミドに目的のペプチドをコードする遺伝子 DNA を挟み込み、それを大腸菌に感染
させて、大腸菌の菌体内の代謝反応系を使って目的の蛋白質を作らせると言うことは
、現在良く行われています。ただ、感染させたい人工 DNA(これを分子生物学の業界
では『ベクター』と呼んでいます)を実際につくるに当たっては、余計なところを切
らないように、配列既知のプラスミドと作用既知の制限酵素を上手く組み合わせてや
るのが普通ですし、それでも目的の人工 DNA が得られる割合(反応収率)は、そん
なに高くないのが普通です。
ただ、ベクター生成の反応効率の向上の可能性を理論的に考える布石として、アイ
ディアとして上手くいくかどうかはちょっとどうかな?(実際には、反応条件の工夫
で解決されることが多いだろう)とは思いますが、着眼点としては本問はちょっと興
味深いと思いました。配列に関する何らかの条件が与えられていれば、もっと議論し
やすい問題になったと思います。
NO.998 | 2001.8.1. | 水の流れ | 誕生日 |
太郎さんは、先日、読者の方からこんな投稿問題を頂きましたので、今回の応募問題にしました。
私,ぷりっぷ@大学院生です.
ちょっと面白い問題を考えたので,よかったら取り上げてもらえるとうれしいです.
問題1 17人いて,誕生日が同じ人が少なくとも1組いる確率は?
問題2 17人いて,誕生日が同じもしくは1日違いの人が少なくとも1組いる確率?
17はN人でも構わないそうですから、追加します。
問題3 N人いて,誕生日が同じ人が少なくとも1組いる確率は?
問題4 N人いて,誕生日が同じもしくは1日違いの人が少なくとも1組いる確率?
NO.999 | 2001.8.1. | Junko | 放物線上の格子点(2) |
(1)曲線C1:y =(√2)・x(x-1) 上の格子点を、全て求めよ。
明らかに、(0,0)と(1,0)という格子点が存在します。
これ以外には存在しないことを示します。
第3の格子点(x0,y0)が存在したとすると、
y0=(√2)・x0(x0-1)、x0≠0,1
ところが、
y0/x0(x0-1) =√2となり、
これは有理数=無理数という矛盾を起こす。
よって、格子点は2点しか存在しない。
(2)a、b、c を実数とする。
曲線C:y = ax2+bx+c 上に3個の相異なる格子点が存在するなら、この曲線C
上には無限個の格子点が存在することを証明せよ。
曲線C:y = ax2+bx+c 上に3個の相異なる格子点が存在するなら、
a,b,c は、有理数となります。
3個の相異なる格子点を、(x1,y1)、(x2,y2)、
(x3,y3)とします。
y1=ax12+bx1+c
y2=ax22+bx2+c
y3=ax32+bx3+c
これを3元1次方程式としてa,b,c を解きました。
(計算間違いをしていなければ、いいのですが・・・)
a=(x1y2−x1y3−x2y1+x2y3+x3y1−x3y2)
/(x1−x2)(x2−x3)(x3−x1)
b=(−x12y2+x12y3+x22y1−x22y3−x32y1+x32y2)
/(x1−x2)(x2−x3)(x3−x1)
c=(x12x3y2
−x12x2y3
−x22x3y1
+x22x1y3
+x32x2y1
−x32x1y2)
/(x1−x2)(x2−x3)(x3−x1)
というわけで、a,b,c は、有理数です。
a=p/q、b=r/s、c=t/u q,s,u≠0 とおくと、
y = ax2+bx+c
=(p/q)x2+(r/s)+(t/u) となり、
xに、q、s、u の公倍数(無限にある)を与えれば、yは整数値となる。
つまり、曲線C上には無限個の格子点が存在する。
NO.1000 | 2001.8.3. | yokodon | 放物線上の格子点(3) |
(2)に関しては、前半は正しいですが、後半が残念ながらハズレです。
3個の格子点があることから、a、b、c が有理数になることを示す部分は正しいで
す。しかし、左記の逆命題にあたる『a、b、c が有理数なら、曲線C上に(少なくと
も)3個の格子点が存在する』という命題は、一般には正しくありません。
例えば、y=x2+1/2 が反例です。
正しくは、「a、b、c が有理数である」という条件の下で、曲線C上のある格子点
(x1,y1)と整数nに対して、
Cのxに x1+nを代入した場合に相当する以下の
値Yが整数となるようなnが無限個存在することを示すことになります
Y=a(x1+n)2+b(x1+n)+c
実際、
Y=y1+(2a・x1+b)n+a・n2
なので、a=p/q、b=r/s(p と q、r と s は各々互いに疎な整数)とおくと、nが
q と s の公倍数であればYは整数です。
(2)に関して、以下の同値関係が成り立っています。
「C上に3個の相異なる格子点が存在する」
←→「C上に格子点が存在し、a、b、c が有理数である」
←→「C上には無限個の格子点が存在する」
放物線上の格子点に関して、個数で分類すると
0個:例えば、y=x2+√2、y=x2+x+1/2
1個:例えば、y=√2・x2
2個:例えば、y=√2・x(x-1)
無限:例えば、y=(1/8)x2+(4/3)x+1/2
・・・のようになります。
全く同じ考察を、3次曲線や一般のm次曲線(m:自然数)に関しても行うことが
出来ます。
例えば、3次曲線の場合は、0、1、2、3、無限…です。
ところが、ちょっと3次曲線の形をいじって、
y2=x3+1
などとしてしまうと、一挙に問題が難しくなってしまいます。
この場合は、格子点の個数は5個です。その5個を見つけるのは試行錯誤でも何と
かなりますが、その5個に限ることを示すのは、それまでの議論とは全く違って難し
くなってしまいます。ただ、これが属する一群の曲線(『楕円曲線』といいますが)
に関するある有名な定理がごく最近証明されたという話がありまして、それがフェル
マーの最終定理と密接な関連を持つ、というわけです…という話の筋を考えていたの
ですけれどね(苦笑)。
NO.1001 | 2001.8.8. | 水の流れ | 2001「高校数学セミナー」 |
岐阜県であった「高校数学セミナー」に参加して、講師の筑波大学渡辺公夫教授の講義を
聞いてきました。テーマは
「ファルマーの定理を解決するにあたる経緯と証明の概要」です。
最初から、受講生に力ずく、「数学を学ぶのに必要なことは、、人より早く解く方法だけでなく、
なぜこの理論が生まれたかを考えることです。自分の思考空間をいかに広げるかなんです。
これが数学のダイゴミなんです。」
講義の中にでてきた幾つかの問題を投稿します。
問題1:肉屋に買い物に行って、√2kgの牛肉を買ってきてください。
あなたが肉屋の主人ならどうようにして、測りますか。
問題2.三平方の定理を知ったばかりの中学生に、3辺の長さが、
3cm、5cm、7cmの三角形がある。
このとき、辺が7cmである対角の角度は何度ですか。
問題3:a、b、cが自然数のとき、次の三平方の定理の解を一般に表してください。
(1)a2+b2=c2
(2)a2+(a+1)2=c2
(3)a2+b2=(b+1)2
(4)a2+b2=(2a±1)2
問題4:の値です。(受講生には、結果として使いました)
さらに、この値を電卓で求めました。この方法も考えてください。ただ、n=10で十分です。
最後には、フライ曲線から、フライ予想、志村=谷山予想の話ででてきて講義が終了しました。
NO.1002 | 2001.8.10. | BossF | 誕生日(2) |
誕生日に関しては
特異日(12/31、1/1、2/29、3/31、4/1)の問題があるそうですが、数学的にはそれ
を無視してと・・
N人いて,誕生日が同じ人が少なくとも1組いる確率は
1-366PN/366Nですから、
1-(365/366)(364/366)・・・{(366-N+1)/366} …@ …問い3の解
@でN=17にして
17人いて,誕生日が同じ人が少なくとも1組いる確率は
1-(365/366)(364/366)・・・(350/366)≒0.999994… …問い1の解
NO.1003 | 2001.8.14. | yokodon | 10で割った余り(1) |
模試シリーズ2
自然数 n を 10 で割った余りを L(n) とする。
(1)自然数 m、n に対して、L(m)=L(n)=1 のとき、L(mn) の値を求めよ。
(2)n を4の倍数とする。L(3n) 及び L(3^(3n)) の値を求めよ。
NO.1004 | 2001.8.14. | 浜田 明巳 | 恒等式の解き方 |
次の恒等式の問題を,生徒に何気なく出題したのですが,面倒なことになってしまいました.
問題は次の通りです.
「2x2+axy−3y2+x+4y−1=(2x+y+b)(x−3y+c)がx,yの恒等式になるように,定数a,b,cの値を定めよ.」
恒等式の解き方には,係数比較,数値代入の2通りの方法があり,
ケースバイケースで計算が楽になる方を選ぶとよい,と指導しています.
ただし,数値代入法の場合,必要十分の関係を満たす為に,
最後に「逆にこのとき,最初の等式を満たす.」という文句を付け加えなくてはなりません.
代入した値のときに成立することは分かるのですが,
他のすべての場合にも成立することを言わなくてはならないのです.
実質的には,何も考えずにこの文句を機械的に書き加えるのが通常です.
成立するのが分かり切っている,今までそうだったから,というのが,本音です.
しかし,上記の問題の場合,数値代入法でやってみると,この考え方がくずれてしまうのです.
解いてみます.
2x2+axy−3y2+x+4y−1=(2x+y+b)(x−3y+c)………@
とする.
@にx=0,y=0を代入すると,−1=bc………A
@にx=0,y=1を代入すると,0=(1+b)(−3+c)………B
@にx=1,y=1を代入すると,a+3=(3+b)(−2+c)………C
Bから,b=−1またはc=3
i).b=−1のとき,Aから,c=1
Cに代入すると,a+3=−2 ∴a=−5
このとき,@は
2x2−5xy−3y2+x+4y−1=(2x+y−1)(x−3y+1)
となり,常に成立する.
ii).c=3のとき,Aから,b=−1/3
Cに代入すると,a+3=3−1/3 ∴a=−1/3
このとき,@は
2x2−xy/3−3y2+x+4y−1=(2x+y−1/3)(x−3y+3)
=2x2−5xy−3y2+17x/3+4y−1
となり,これはx,yの恒等式ではない.
i).,ii).から,答はa=−5,b=−1,c=1である.
やはり,問題はコツコツと丁寧に解いていかなくてはならないのでしょうか.
恒等式には係数比較法が一番よいのでしょうか.
NO.1005 | 2001.8.14. | 渡部 勝 | 正方形の折り紙(2) |
数学の重要性
数学を学ぶと言う事は、もはや公理、定理や公式を使って証明する事、
計算する事では無くなっていると思う。
数学を学ぶと言う事は、新しい定理や公式を発見する事であり、問題
を解決する能力を開発する事、活性化する事であると言って良いのでは
ないか。それゆえに、政治や経済の分野においてもその数学が重要となるのです。
「創造力」と言う言葉はごく一般的ですが、「工夫力」とはあまり言
わないようです。 「創造力」とは、ひらめき力の事であり、「工夫力」
とは、そのひらめいた物、ひらめいた事を具体化、具現化するプロセス
における問題解決力と言って良い。
企業社会における、創造力と工夫力とは、すなわち「ヨシ! 100円で
作ろう」と言う創造力と「どのようにしてそれを作るのか」と言う工夫力
の関係である。
其処でこの「工夫力」を開発すると言う事、それは例えば、一枚の長方形
の用紙を生徒に与え、「その用紙の面積を三等分せよ」とする時、どのよう
にこの問題を解決するのかと言う能力を開発するに等しく、これは大変
重要な事である。解答は一通りではありません。
学生たち、いや、多くの社会人が数学嫌いである現状は多いに憂慮され
なければならない。私は「工夫力」の開発、活性化のために、提案を続け
ていきたいと思います。
問題
「用紙 A4版の面積の1/3となる正方形を作りなさい」
この用紙を使います。